あなたが小売店に足を踏み入れると、自律型のロボットが出迎えてくれる。そのロボットにお目当ての商品の場所を訪ねると、その場所まであなたを案内する。
SF映画に出てきそうな場面だが、これは遠い将来の話ではない。店員型のロボット「NaVii(ナビ)」は、すでにアメリカで稼働しており、日本でも試験導入が進んでいる。
様々な言語に対応する店員型ロボット
「NaVii」は小売店で活躍する店員型のロボットだ。高さ約152cmほどの「NaVii」は人間の言葉が理解できるので、話しかけることでコミュニケーションすることができる。例えば、「テレビはどこ?」と尋ねると、「NaVii」に搭載された19.5インチの前面モニターにテレビ商品の一覧が表示される。このモニターはタッチパネルになっていて、そのモニター上でお目当てのテレビを選択すれば、「NaVii」がその商品のある場所まで誘導してくれるというわけだ。
「NaVii」は日本語だけでなく、英語、スペイン語、中国語、韓国語にも対応しており、丁寧な言葉づかい各言語での要望にも応えることが可能だ。また、「NaVii」の背中に搭載された25インチのモニターには広告が表示できるようになっており、まさに「動く広告塔」としての役割も果たすのだ。
店内を回遊しながら在庫を把握
「NaVii」は接客ができるだけでなく、店舗経営の効率化にも貢献することができる。店内を動き回る「NaVii」にはカメラが搭載されていて、お客様を案内しながら棚にある在庫数や価格の変動率の確認も行ってくれる。「NaVii」が確認した在庫情報は、即座にデータベースに反映されるため、小売店は在庫情報を正確に把握できるだけでなく、欠品に対して素早く対応することができるのだ。
「NaVii」を開発したFellowRobots(フェローロボッツ)の創業者であるマルコ・マスコッロ氏によれば、小売店が販売機会を失う最大の原因は3つあるという。それは、「お客様が探している商品が欠品していること」「お客様が商品にたどり着けないこと」「従業員がお客様をお目当ての商品まで案内できないこと」だ。
つまり、動きながら在庫情報を集め、日本人客だけでなく外国人客の要望にも応えることができ、お目当ての商品まで案内することができる「NaVii」を店舗に導入することで、小売店の機会損失を減らし、店舗の経営を効率化させることができるのだ。「年間4,500万ドルを売り上げる規模の店舗の場合で、在庫管理の正確性が50%以下という現状があります。この数値を10%改善するだけで、年間300万ドルの収支の改善を図ることができるのです」とマスコッロ氏は話す。
アメリカではすでに「NaVii」の稼働が始まっており、日本では2015年秋から日本ユニシスがFellowRobots社のロボットの取り扱いを開始し、今年の2月にはヤマダ電機が「NaVii」に試験導入している。また、パルコが7月1日にグランドオープンする仙台パルコにて「NaVii」を導入することも発表している。
工場などで利用される産業用ロボットに対し、店頭での接客を担当するFellowRobotsの「NaVii」やソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」などは「サービスロボット」と呼ばれる。音声認識技術や画像認識技術が実用に耐えうるレベルまで到達し、汎用技術を組み合わせることによって低コストでロボットを開発することが可能になったことから、近年サービスロボットの開発が活発化している。その市場規模も巨大だ。
野村総合研究所によると、サービスロボットの市場規模は東京オリンピックを迎える2020年に産業ロボットと同等の1兆円規模まで成長すると予測している。また、2035年におけるサービスロボットの市場規模は5兆円に到達し、サービスロボットこそがロボット産業全体をリードする存在になるだろうと予測している。
日本でも稼働が本格化しつつある「NaVii」に注目すると同時に、オートメーション化が進む世界の中で人間が果たすべき役割を考えていくことが今後重要になっていくだろう。
NaVii(ナビ)
http://fellowrobots.com/