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自律走行型のミニ配送車「Dispatch」は配送の未来を変えるか?

運送業界の進化がめざましい。運送業界のイノベーションといえば、AmazonやGoogleが実用化に向けて動いているドローン配送が注目を集めているが、もう一つ見逃せないのが自律走行型の配送車だ。
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自律走行型のミニ配送車を開発するDispatchが2億円を調達

人工知能を活用した自律走行技術をベースにしたミニ配送車を開発するサンフランシスコのスタートアップDispatch(ディスパッチ)は、4月6日に名門ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzなどから200万ドル(約2.1億円)を調達。同社は、自律配送車の大都市での実用化を目指して、便利で手頃な価格のサービスを提供するべく開発を進めている。
Dispatchが現在開発しているのは「Carry(キャリー)」という名前のミニ配送車で、最高時速6kmほどのスピードで目的地まで無人で運ぶことができる。最大積載量は約45kg。
ユーザーはアプリで「Carry」の現在地を確認することができ、到着時の通知の受信や鍵の解錠などをすることができる。現在は地元の大学キャンパスで試験運用中だ。

「Carry」は人工知能を搭載しており、安全な走行をするようにアルゴリズムが組まれている。また、様々な状況で走行すればするほど学習して賢くなり、より複雑な環境下においても適切に行動できるようになる。現在は大学キャンパスという限られたエリアでの試験走行を行っているが、最終的には大都市での走行を可能にすることが目標であるという。
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盗難されないかどうかという心配もあるが、「Carry」は常に4Gネットワークにつながっており、なにか走行予定場所と違うなどの異常を感知すればDispatchのチームに通知がいき、適切に対応されるとのことだ。
Dispatchは、マサチューセッツ工科大学とペンシルベニア大学のコンピュータビジョンの研究者が立ち上げたスタートアップで、元々は「Floored 」という3Dデータキャプチャー&ビジュアリゼーションソフトウェアの開発に関わっていた。彼らは現在南サンフランシスコに拠点を置き、Floored の開発に活用したコンピュータビジョンや機械学習技術を使ってDispatchの開発にあたってきた。
現在はコーファウンダー3名とフルタイムの従業員1名の小さなチームであるが、今回新たに調達した資金を元に、優秀な人材を獲得したいと語っている。

新たな配送の選択肢となるか

今後大都市での実用化を目指すのであれば、規制面は一つのハードルになるが、Googleやテスラなどが先陣を切って開発と実用化に取り組んできた結果、規制も徐々に整備されつつある。米運輸省は今年の2月に自律運転車に搭載される人工知能を法律上の「運転手」とみなす見解も示しており、実用化を目指す各社にとっては追い風になった。
同じ運送業界で注目されるドローンに比べれば、こうした規制整備が一歩進んでいる、また「墜落による事故がない」というメリットがあるため、自律走行車による配送が先に普及するのではないかという見方もあるようだ。
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なお、自律運転の配送車の競合としては、 Skypeの共同設立者が立ち上げたエストニアのスタートアップ Starshipがあり、今後の両者の進捗が見逃せない。
最終的にどのプレイヤーも解決したいのは、運送業界で課題となっている、いわゆる「ラストワンマイルの配送」だ。社会のEコマースへの依存度が増す中で、いかに物流を効率的にして、消費者の自宅まで速く安く届けるかという模索が続く。
ドローン、自律配送車といった新たな配送手段への期待がますます高まる中、どの手段、どの企業が業界をリードしていくのか。予測するのはまだ難しそうだ。


Dispatch(ディスパッチ)
http://dispatch.ai/

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