WORLD WATCHカナダ

累計1.2億ドルを調達したクラウドPOS「Lightspeed」は、リアル店舗とオンラインストアをつなげるフェーズへ

2015年9月に総額6,100万ドルを調達し、改めて注目を集めたカナダのスタートアップ企業がある。モントリオールで2005年に設立されたLightspeed(ライトスピード)だ。
同社がこれまでに調達した資金の総額は1億2,600万ドル(現在のレートで約138億円)にのぼる。
lightspeed0

小売店やレストランにクラウドPOSシステムを提供

Lightspeedは、小売店やレストランといったスモールビジネスに対して安価なクラウドPOSシステムを提供している。このシステムはiPadやパソコン端末に導入することができ、データはクラウド上で管理される。レシートプリンターや、タブレット端末に接続できるクレジットカードリーダーなどのハードウェアも提供しており、必要なものは一通り揃えることが可能だ。利用料金もリーズナブルで、レストラン向けのPOSシステムであれば月額59ドルで利用できる。
また、同社のPOSシステムは小売店やレストランごとに最適化されたシステムを提供しているところも興味深い。たとえば、レストランに提供されるシステムには従来のPOSシステムに加えて、メニューを作成するツールや、店内のレイアウトをカスタマイズする時に使えるツールなどが用意されている。
lightspeed

100ヵ国以上の3万5,000超の店舗で利用されるPOSシステム

2005年の創立から着実にその顧客基盤を拡大し、現在では100以上の国で事業を展開。3万5,000以上のスモールビジネスが同社のPOSシステムを利用している。システム上での取引金額は年間120億ドルにものぼる。
このPOSシステムこそが同社の創業ビジネスなのだが、本当に注目すべきは、2016年3月に北米向けにもリリースされた「Lightspeed eCom(ライトスピードイーコム)」と呼ばれるサービスだ。
lightspeed3
「Lightspeed eCom」は、同社が提供するEC構築プラットフォーム。店舗のオーナーはこのプラットフォームを利用して、オンラインストアを簡単に作り上げることができる。
提供される機能には、デザインのフルカスタマイズ機能、セールス情報の予測分析、在庫管理システムなどが含まれる。このサービスが開始されたのは2015年11月。ハイネケンなどを顧客に抱えるアムステルダムのEC企業SEOshop(エスイーオーショップ)を買収し、LightspeedがECプラットフォームに関するノウハウを獲得したのがきっかけだ。

リアル店舗とオンラインストアをつなげる

この買収の背景には、同社の大きなビジョンがあった。それは顧客のリアル店舗と、オンラインストアをつなぎ合わせるというものだ。
最近では、リアル店舗に買い物に行く前に、オンラインで商品をチェックして目星をつけておくという消費者行動が見られるようになった。
たとえば、近くの書店に本を買いに行く前に、事前にアマゾンでその本のレビューをチェックするというのもその例だろう。そういった背景もあり、リアル店舗とオンラインストアを一つのプラットフォームで管理するというニーズが生まれた。
同社の中心メンバーの一人、Chif Revenue OfficerのJP・ショーヴェ氏は、Betakitのインタビューの中で「古くからある従来型の店舗とオンラインストアは、一つで”コマース”というものになりつつあります。店舗のオーナーは、消費者がその時どこにいても、どんなデバイスを使っていたとしても、彼らを自分の店舗とつなげておく必要があるのです」と語る。
funding-blog

中央3名の左からCFOの
デイブ・シェリー氏、CEOのダックスダ・シルバ氏、CROのJP・ショーヴェ氏

そして、この「リアル店舗とオンラインストアを一つのプラットフォームで管理する」というビジョンは、すでに同社がリアル店舗に対するPOSシステムというコアビジネスを展開しているからこそ可能なものだった。
前述した「Lightspeed eCom」は、LightspeedのPOSシステムと統合することができる。これにより、店舗オーナーは自社のオンラインストアを簡単に構築できるだけでなく、リアル店舗とオンラインストアのセールス情報や在庫情報を一括管理することが可能だ。
オンラインからの注文が即時に反映されるため、リアル店舗での予想以上の売れ行きによって、オンラインストアからの注文に対応できなくなるということもない。
店舗のオーナーからしてみると、それぞれの店舗を別々に運営するのでなく、まるで一つの大きな店舗を運営するかのようにオンラインストアを持つことができる。これはEC構築サービスだけを提供する企業単体では不可能なことであり、リアル店舗のPOSシステムとECプラットフォームの両方を兼ね備えるLightspeedだからこそ可能になったサービスなのだ。
Retail System Researchの調査によると、60%の店舗オーナーが全てのチャネルを通した商品情報、在庫情報を把握することは重要だと答える一方で、40%のオーナーがリアル店舗とオンラインストアの統合に苦労していると答えている。Lightspeedは、その問題点にアプローチし、消費者に現実世界とオンラインの両方を通した消費体験を提供している。


Lightspeed(ライトスピード)
https://www.lightspeedhq.com/

You may also like

Comments are closed.