今も昔も、格安旅行にはバスが欠かせない。陸続きのアメリカ大陸やヨーロッパでは、バスは海外への旅行の手段としても使われ、コストをかけたくない若者から根強い人気がある。バックパック一つで貧乏旅行をする、いわゆる「バックパッカー」も盛んだ。
63カ国1万以上の都市をカバー
モントリオール発祥の「Busbud(バスバッド)」は、そんなバス旅行をより便利にしてくれる。「Busbud」を使えば、ユーザーはオンライン上で簡単にバスチケットの予約が可能だ。
数多くあるバスチケットを、価格やリクライニングシートの有無などの条件で比較することで、自分に適したチケットを素早く探し出し、予約することができる。
63ヵ国、1万以上の都市をカバーし、50万以上のバスルートが掲載されているので、お目当てのチケットを見つけることができる。
航空券の予約サービスには「Expedia(エクスぺディア)」や「トラベルコちゃん」などがあるが、「Busbud」はそのバス版と言ってもいいだろう。
実際に「Busbud」を利用してみると、その簡単さに驚かされる。チケットの予約までには、ルートの指定、チケットの選択、支払いの3ステップのみ。支払い情報を入力する時間を含めても、15分もあれば予約ができてしまう。
スマートウォッチにも対応
2014年にはスマートフォンアプリの提供を開始したほか、翌年には「Apple Watch(アップルウォッチ)」や「Android Wear(アンドロイド・ウェア)」などのウェアラブル端末向けのアプリも開発。
このアプリでは、購入したチケット情報の確認、バス停までの行きかた、バスの遅延情報などをチェックすることができる。チケットはWEBとアプリで予約し、旅行中はウェアラブル端末で情報を受け取ることができ、旅行者の利便性をさらに増すことになった。
同社は「Busbud」の他にもさまざまなサービスを展開している。平日限定のディスカウントなどにより、価格が1ドルまで下がったバスチケットを検索することができる「The Dollar Bus Club(ダラー・バス・クラブ)」や、バスと飛行機による移動を価格や到着までの時間で比較することができる「Bus vs Plane(バス・バーサス・プレーン)」などだ。
数多くのバス会社がバラバラに運用していた
「Busbud」のアイデアは、CEOのルイ・フィリップ・モーリス氏が南米に旅行した際に生まれたという。その旅行中、長距離バスに50回以上乗った彼は、「多くの人が航空券をExpediaやKayak(カヤック)といったWEBサイトで買っているのに、バスチケットの予約にはそのようなシステムがない」ことに気が付いた。
「バスでの旅行は、昔から変わらない原始的な旅行手段です。でも、それにバスの検索サイトやアプリといったテクノロジーを組み合わせれば、バスでの旅行はもっと快適になると思ったのです」
同社に900万ドルを出資した「Omers Ventures(オマーズ・ベンチャー)」がブログ上で指摘したように、従来のバス旅行は「数多くのバス会社がバラバラに運用していた、古臭い予約システム」によって支えられていた。そこに「Busbud」の新しいシステムが誕生したことで、バスの旅行がより便利に、より魅力的になったのだ。
しかし2011年に同社がサービスをリリースして以降、その市場に目を付けた同様のサービスが次々に誕生した。北米の「Wanderu(ウォンデル)」や「Bus Tripping(バス・トリッピング)」などだ。そのような他社との競合に、今後「Busbud」はどのように対応していくのだろうか?
モーリス氏は他社との競合において、「すでに築き上げたバス会社とのパートナーシップ」と、「それに基づくカバー率」がキーポイントとなると話す。
北米やアジアなどの特定の地域をカバーしている他社とは対照的に、世界全体をカバーする「Busbud」では予約できるルート数も多い。これは、ユーザーにとっては高い利便性を意味し、バス運用会社にとっては、利用者が集まる「Busbud」にルートを提供するメリットにつながる。
すでに多くのパートナーシップを持ち、いち早くこのサービスを手掛けた「Busbud」は、ある種の先行者利益を獲得したとも言えるだろう。
実際に同社は、2014年に北米最大のバス会社「Greyhound(グレイハウンド)」と提携し、「Busbud」のプラットフォーム上に3,800ルートを加えた後も、2015年9月には「Flixbus(フリックスバス)」、「Peter Pan Bus Lines(ピーターパン・バスラインズ)」と提携。さらに同年11月には「Go Bus(ゴーバス)」とのパートナーシップを発表するなど、ルートを拡大し続けている。ルートが増え、ユーザーにとっての利便性が高まるにつれ、利用者も増える。そうすれば、バス会社にとって「Busbud」と提携する魅力が高まり、さらにルートを拡大できるというわけだ。
これまで急拡大を遂げてきた「Busbud」は、他社との競合に打ち勝ち、今後も発展を続けていくことができるのだろうか。注目していきたい。
Busbud(バスバッド)
https://www.busbud.com/