【体験レポ】店内にあるもの全て試食できる「試食屋」に訪問してみた

NEWSREPORTSHOPPING

いま「試食専門店」が話題になっています。体験に特化した店舗といえば「b8ta」や大丸東京の「明日見世」など、ガジェットやコスメといったカテゴリ中心に広がりを見せていた印象がありますが、コロナ禍でスーパーなどでの試食販売が困難になったことをきっかけに、試食専門店も広がりをみせようとしています。

リアル店舗の良さは、実際に商品を手に取って確認できる点。しかし、食品に関していえば商品を置くだけでは十分ではありません。パッケージからある程度の味を想像することはできますが、それだけではネットと情報量はほぼ変わらないのです。やはり味わってみないことには自分が求めている商品なのかどうかを判断するのが困難で、とにかく手に取ってもらおうとパッケージの工夫で各社がしのぎを削っている現状があります。

「実際に食べてもらえば魅力は伝わるはずなのに…」そんなメーカーの悩みに応えるのが試食専門店です。

2023年2月に自由が丘にオープンした「試食屋」

2023年2月に東京・自由が丘にオープンしたのが試食専門店「試食屋」です。店内には、全国から集めた100種類以上の食品や飲料などの逸品が展示されており、すべての商品が試食可能です。売ることではなく、試してもらうことを前提としているため、気になった商品をまずは試してもらいたいというのがこの店舗のスタンスです。ちなみに試食はすべて無料で提供しています。
多い日には100人以上が訪れるこのお店。訪問する客層は9割以上が女性で、40代〜60代が7割超を占めています。食品を日常的に購入している層であり、新しいモノが好きだったり、知らない商品に出会えるといった好奇心が旺盛な層が多いそうです。

「試したら買わなきゃいけないのではないか」こう思われる方が多いかもしれませんが、この店舗では商品を展示するメーカーから月額費用を支払ってもらうことで売上を立てています。店舗で商品の販売や、購入できるECサイトの紹介も行っていますが、そこではマージンを取っていないため、無理に売ることはありません。
また、この店舗を運営するLiva社は、営業戦略コンサルティングを本業としているので、付随してその企業のデータをもとにしたコンサルや広告運用、営業支援、商品開発といった業務も請け負っています。その為、お客さんからの正直なフィードバックが何より重要なのです。

それでは実際に試食を体験した様子をご紹介します。

実際に試食を体験

まず店頭に並んでいる商品の中から試食したい商品を選びます。それぞれの商品に添えられたカードには商品の説明が記載されているので、それらを参考にしながら選ぶことができます。

ポップでも商品の特徴が確認できるほか、店員も常駐しているので、商品の詳細を説明してもらうこともできます。

試食したい商品が決まったら、それぞれの商品に添えられたカードを取って店員に渡します。試食する数に制限はないので、気になったら何点でも試食して良いそうです。

実際に商品を試食。店内には試食用のスペースが設けられており、こちらに選んだ商品を運んでもらえます。日常生活での使用シーンをイメージできるように、できる限り調理を行ったり、付け合わせを一緒に提供しているのだとか。

「もやし屋のまかないダレ」では実際にもやしに絡めたものを、「あたしのニラ唐辛子」ではあったかいご飯が一緒に添えられて提供されました。

これ単体で味わってもよくわからないというのが正直なところなので、ありがたいですね。

試食したら、商品ごとのアンケートを記入します。メーカーは率直な意見を求めているので、正直な感想を記入します。項目は、「年代」「性別」「味」「価格」「パッケージ」「購入意欲」といったもの。
もしかしたら、ここで記入した内容が将来の商品の改善につながるかもしれません。

商品を気に入ったら店舗で購入することができます。今回はこちらの商品を購入決定。いづれもよく売れている商品だそうです。

ちなみに、試食の際にピックアップしたカードは持ち帰ることができるのですが、このカードのQRコードから、その商品が購入できるECサイトや関連SNSに遷移できるので、後で購入することも可能です。

実際に試食してみての感想

パッケージを見て「これは間違いなさそうだなぁ」と思って選んだものが、全然想像と違った味だったり、好みではなかったり、やはり実際に味わってみないとわからないものだなぁと改めて実感しました。

試食屋はセレクトショップとは異なる性質があります。置かれている商品は試食屋が選んでいるわけではなく、基本的に出品を希望する商品はなんでもウェルカムなスタンスを取っています。

運営するLiva代表の中村氏は、その理由を以下のように説明します。

「ここはお客さまに“こういう商品があります”と売りたい店ではありません。企業のPRの場であり、マーケティングリサーチの場なのです。要は事業拡大の第一歩にしてもらうための場。そう考えると、どんな商品が売れるのか、どんな商品がお客さまに好まれるのか、我々には判断ができませんし、判断するべきではないと考えています。なので、いろいろなメーカーに挑戦していただきたいと考えています」

セレクトショップの場合は、その店舗の目利きを信頼して商品を購入する側面もあると思いますが、試食屋の場合はそもそも食べてみることができるので、良いかどうかはお客さまが判断できるという訳です。逆においしくないものが置かれていても、実際に買ってからガッカリすることはないので信頼を損なうこともありません。

多彩な商品が展開され、情報過多の時代だからこそ、アナログでもあるこの取り組みがメーカーにとっては貴重な場になっているといえそうです。「究極作りたいのは“全部試食できる物産展”」という中村氏、今後どのような広がりを見せるのか楽しみです。

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

You may also like

Comments are closed.