三井アウトレットパーク 木更津の近接地にファッションを楽しむテーマパーク「KISARAZU CONCEPT STORE(木更津コンセプトストア)」が6月8日にオープンする。
かつて駐車場だった場所に生まれた敷地面積約7,300平米のこの施設は、ららぽーとや三井アウトレットパークなどを展開してきた三井不動産が、これまで広げてきたビジネスを見つめ直し、「現状の消費や生産を含むサイクルを変えていくきっかけづくり」として展開する新たな試みの商業施設。
スマイルズが展開する「PASS THE BATON」がプロデュースし、コンセプトメイキング、空間プロデュース、各種制作物のデザインやクリエイティブなどを手掛けている。
規格外・デッドストックを70%オフなどで販売
「KISARAZU CONCEPT STORE」は、これまでの商流では届けきれなかった規格外品やデッドストック品(売れ残り倉庫に眠っていた在庫品)などのファッションアイテムに光を当てることにより、もう1度買ってくれる人との出会いの場を提供する施設となる。それでもと届けきれない残布や洋服はアップサイクルしたり、別のものに生まれ変わらせることで、違う使い道を創造するところまで考えられている。
延べ床面積約3,000平米の空間は、カジュアルウェア、デザイナーズ、ラグジュアリー、アクセサリー、キッズアイテムなどのA〜Eの5つのゾーンに分かれており、約2万〜3万点の様々なブランドのファッションアイテムが並ぶ。販売価格について明確に提示されてはいないが、オープン前に並んでいたアイテムの価格は70%オフ以上のものばかり。どの商品を手に取っても「想像よりも安い」という印象だった。
この施設には、入場料として300円(中学生以下無料)が発生する。この施設の入場料と購入した商品代金の一部は、社会課題を解決するための取り組みを行なっている企業・団体への協賛に用いられ、来訪者自身が協賛先を選べる仕組みだ。
オープン時には、洋服から野菜を育てる肥料を生成する「クレサヴァ」、廃棄繊維から紙を作る
「サーキュラーコットンファクトリー」、洋服を燃料に変える研究開発を行う「文化学園大学 服装学部ファッション社会学科」の3団体が選べる。
入口には、アパレルショップとしては珍しいショッピングカートが置かれている。「気になった商品はどんどんカゴに入れて、試着をして欲しい」という狙いだ。フリーショッピングを推奨しており、基本的に店員に話しかけられることはない。自由に心のままに服を見て、気兼ねなく試着をしてほしいという考えだ。
買い物はA〜Eのゾーンを順番に見てもらう想定で作られている。IKEAのスタイルのようなイメージだ。全てのエリアは、メンズとレディースの明確な区分けはなく、なんとなく分かれているような配置。割合としてはレディースアイテムが多めという印象だった。
エリアごとに様々なデザインが施されており、探索していて楽しい空間となっている。店舗で使われている什器の一部は、PASS THE BATONや三井不動産の商業施設に出店する店舗などが使用していたものなどを再利用している。
デザイナーズエリアにはハイブランドもたくさん並んでいた。サイズさえあれば欲しい商品はたくさんあった。そこは1点ものの難しさ。
ユニークな取り組みの「OPEN STOCK」というエリア。ここには、誰かが手に取ったけども返却された服が並ぶ。ある意味セレクトされたアイテムが並ぶエリアだ。(写真はオープン前の展示)
「SECRET ITEMS」と名づけられた売場にはアクセサリーを中心としたラグジュアリーアイテムが並ぶ。この売り場だけは商品がガラスケースに入れられており、常駐する店員に声をかけて取り出してもらう形だ。
店舗のいたるところに試着スペースがある。返却台も併設されており、自分に合わなかったアイテムはここで返却すれば良い。元の場所に戻す必要がないので、まとめて試着する際にも安心だ。
「FITTING STUDIO」と名づけられた特別な試着スペースもある。スペースが広く、各部屋ごとのカラーに合わせたライティングが楽しめる。
洋服本来の色を確認したい場合は、部屋から出てすぐのミラーで確認できるようになっている。
企画展示を行う「POP UP STAGE」もある。オープン時には、汚れや色落ちで着られなくなった服を黒に染めることで再び着られるようにするサービスを提供する「KUROZOME REWEAR FROM KYOTO」が展示している。
「FACTORY LAB」では、クレサヴァの「CIRCULAR FARM」や、文化学園大学の衣類から次世代再生可能エネルギーを創る過程を紹介する展示などが行われており、体験コーナーも用意されている。
商品の仕分けをしている様子もあえて店内から見えるようにしている。
ショッピングの合間に楽しめるカフェ「THE OPEN CAFE」も併設している。もったいないにフォーカスし、キズや規格外などを理由に、まだ食べられるのにお蔵入りになる可能性のある食材を利用したコラボレーションメニューが楽しめるカフェとなっており、一部の食材はソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営するクラダシが提供。オープン時には愛媛県八幡浜市産の柑橘「まどんな」を使ったスムージーを販売。こちらは豊作により余ってしまったまどんなを使ったメニューとなる。
ほかにもハンバーガーやコーヒーなどのドリンクなども販売。試飲させていただいた、「梅レモネード」もおいしかったのでおすすめ。
カフェの隣には「Kuradashi」の食物販コーナーも展開。まだ食べられるにも関わらず捨てられてしまう可能性のある食品を中心に、環境や社会、人に配慮し作られているエシカル商品などを販売している。
「三井アウトレットパーク 木更津」からは、信号を挟んですぐの場所にある。アウトレットパークからの行き来もしやすい距離となっている。
販売されている商品は、規格外品やデッドストック品なのですべて新品。規格外品にはその理由を付随の紙で確認できるようになっている。オフプライストアは同じ商品が多く並んでいるイメージだが、こちらは1点ものが多く、古着屋さんのような出会いを楽しめる印象だった。ブランドでエリアが分かれていないのも、そう感じる理由の一つだろう。
あくまで規格外品やデッドストック品が並ぶ店舗なので、魅力的な売場作りを保ち続ける難しさがあるのは間違いないと思われるが、掘り出し物を見つける感覚でショッピングを楽しめ、アウトレットとも違う新しいショッピング体験を提供する施設として今後が楽しみである。