カンロがZ世代に向けた新商品「透明なハートで生きたい」を発売。現役高校生との共同開発で見えたものとは

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カンロは、飴の新商品「透明なハートで生きたい」を発表し、2023年5月16日から全国のコンビニエンスストアおよび駅売店で販売を開始した。この一見不思議な名称の新商品は、現役高校生との共同開発による「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」から生まれたものだ。若年層に飴が選ばれなくなっている中、キャンディ市場シェアNo.1であるカンロが飴の持つ価値を再定義し、約1年のプロジェクトを経て送りだした商品だ。一体どのような背景でこの商品は生まれたのか。

10代にとって、飴は「自分で買わないもの」

カンロは、これまでグミ製法を応用した「マロッシュ」など、Z世代をターゲットにした商品を積極的に発売してきた。しかし、SNSを中心に「グミ」が話題となる一方で、飴のトレンドは停滞し、若年層にとって「飴は魅力のないお菓子」と感じられるようになっていた。

キャンディ市場の動きを見ると、2022年の売上構成比では依然として飴がトップである一方で、コロナ禍に底を打ったキャンディ市場の中で、グミの成長と比較すると飴は伸び悩む状況となっている。

飴の年代別購入規模で見ると、年代が下に行けば行くほど平均購入規模は低下し、特に10代はかなり少ないことがわかる。この背景には、遠足のお菓子で「飴、ガム禁止。お菓子交換禁止」「家の置き菓子として選ばれていない」「駄菓子屋の減少」などにより、幼少期に飴に触れる機会が大幅に減少していることが挙げられるという。

プロジェクトに参加した現役高校生のメンバーからも、従来飴に持っていたイメージに関して、「人からもらうことはあるが、自分では買わないもの」「おばあちゃん世代が常に持ち歩いているイメージ」「かさばって持ち歩きづらいもの」といった意見が寄せられた。飴はそもそも選択肢にも入っていないのではないか、という懸念さえ感じさせられるものだ。

10年後を見据えて取り組むべきは“飴自体に興味を持ってもらう”こと

これに対し、カンロは飴の価値を再認識させ、10代に飴の原体験を作りたいと考え、「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」を発足。プロジェクトを発足したきっかけは、「ピュレグミ」のブランド担当である河野氏の社内会議での提言だった。

「個々のブランドをブラッシュアップしていくことも非常に大事だが、それよりもまずは飴市場全体に目を向けて、市場活性化あるいは市場を育てていく必要があるのではないか」(河野氏)

この発言をきっかけに、河野氏をプロジェクトリーダーとして抜擢し、プロジェクトがスタートした。「10年後を見据えたとき、取り組むべきはまず“飴自体に興味を持ってもらう”こと」(河野氏)。まずは社内十数名と議論を行い、カンロが思い描く飴の価値、あるべき姿を整理するところからはじめた。そして、10年後には「飴は“もらうモノ”から、“あげたいモノ”に。そして“うれしいモノ”の象徴にしたいという答えを導き出した。
こうして「Z世代飴の原体験共創プロジェクト」の大きな目的は、幼少期にあまり飴に触れる機会がなかったZ世代に、“飴の原体験”=“飴によって時間を濃くする体験”を作ることと定義した。

Z世代にとってお菓子は“食べ物というよりアイテム”

次に現役高校生との座談会を重ね、課題や可能性を洗い出すところからはじめた。

その結果から、河野氏は「消費行動の特徴として、商品購入の動機は、物の良さよりも世界観が自分に合っているかが重要であり、デジタルネイティブの世代らしく、企業からの押し付けではなく、自分で商品を選びたいという潜在意識が浮かび上がりました。
また、飴に関しては、ほぼ購入されておらず、飴が持つ時間を濃くする体験を経験してこなかった世代にとって、飴は機能的な消費のみ。そしてイメージが乏しく、楽しさや新しさがほぼ感じられていないという、飴を主力とする企業として大変厳しい現状を突きつけられました」と振り返る。

カンロ Z世代 飴の原体験共創プロジェクト プロジェクトリーダー 河野 亜紀氏

Z世代にとってお菓子は“食べ物というよりアイテム”であり、商品からコミュニケーションが生まれるかが重要であること、また、日常生活の中で心のつながりや愛情、安心感を欲していることが明らかになった。これらの意見を基に、モデル/タレントの3名の現役高校生を「キャンディディレクター」に任命し、商品のコンセプトからパッケージまでを開発した。

キャンディディレクター。左から神谷侑理愛さん、大塚萌香さん、市ノ瀬アオさん

揺れる気持ちが晴れやかになるような想いを込めた

完成した新商品「透明なハートで生きたい」は、じんわり溶ける飴だからこそ実現した、10代のゆらぐ気持ちに寄り添う体験を提供するものだ。飴粒は日常で触れる機会が多い「ハート」型を採用し、色味には「透明」要素を取り入れた。揺れる気持ちが晴れやかになるような想いを込め、半透明な色で気持ちがクリアになった様子を表現している。

製造工程では透明感を出すことが難しい飴粒において、約120回に及ぶ試作を重ね、商品コンセプトに合う納得のいく色合いを実現した。通常試作は多くても10回〜30回程度とのことで、非常に苦労したという。フレーバーは懐かしさと安心感があり、青春を彷彿させるクリアソーダ味だ。ブルーとクリアカラーの飴はそれぞれ異なる味わいで、飽きずに楽しめるよう仕上げた。

商品名からはあえて飴らしさを排除し、ハッシュタグを付けてSNSで共有したくなるセリフのようなフレーズを選んだ。これは10代の儚さと強さを表現するためだ。

パッケージはその日の気分に応じて選べる6種類を用意し、青春をイメージした気持ちが明るくなるデザインを採用した。表面の円窓から中身の飴粒が見える仕様で、裏面にはそれぞれ表面デザインと連動したポジティブな気付きを与えるストーリーを記載している。

河野氏はプロジェクトで印象的だったことについて「高校生は無敵な面があると思っていたけれど、意外と心の寂しさがあり、私たちが想定していなかった回答が印象的だった」と振り返る。
機能性で選ばれるのではなく、感覚で手に取りたくなる。10代の気持ちに寄り添う、そんな存在に「透明なハートで生きたい」はなれるのか。ハッシュタグ「#透明なハートで生きたい」に注目である。


透明なハートで生きたい
https://kanro.jp/products/7614703534239

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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