イオンのプライベートブランド(PB)である「TOPVALU(トップバリュ)」が好調だ。2022年度の売上高は過去最高となる約9,000億円(前年比110%増)に達する見込みで、ブランドの50周年を迎える2023年度は新しいブランド体系のもと1兆円の大台を目指す。
環境変化とそれに合わせた変革
イオントップバリュ 代表取締役社長の土谷氏は「2022年は、円安、物価高騰、コロナ禍の行動規制などの様々なことがあり、お客様の節約志向が一気に高まった1年間だった」と振り返る。これによりナショナルブランド(NB)からPBへのスイッチが顕著におきたことが要因として挙げられるが、価格の維持だけでなく新しいニーズを捉えた商品開発を進めてきた成果でもある。
土谷氏は環境変化として「世帯構造」と「価値観(嗜好性)」の変化をあげる。
「すでに起きている環境変化として世帯構造の変化がある。1985年から見ていくと、私たちがメインターゲットと考えている『夫婦と子(ファミリー層)』が大幅に減少し、圧倒的に『単身世帯』が増加している。ファミリー層と肉薄している状況だ。単身世帯の内訳を見ると、65歳以上が約3倍と大幅に増えており、若者や中間層も多く全体的に増えている。この世帯構造の変化を見ても、私たちが狙うターゲットおよび商品は変えていかなくてはならない」(土谷氏)
価値観・嗜好性の変化に関しては、2019年と2021年を比較すると、いつも同じブランドを選ぶ「定番安心」で選ぶ顧客が減少する一方、自分の価値観にあった商品を購入する「こだわり」で選ぶ顧客が増加しているという。“より選ばれる時代”になっている時代といえそうだ。
2022年はこれらの環境変化に向き合いながら商品開発を行なってきた結果、自社で毎年行なっているブランドエクイティ調査で過去10年で最高の評価を得られた。
トップバリュでは現在、商品化する条件として、「モニター調査で“おいしい”と80%以上が回答し、馴染みのメーカーと比べて“トップバリュを選ぶ”と回答した割合が高いこと」という厳しい条件も設けている。そして、すべての商品に料理の専門家が入りおいしさを担保しているという。そういったことが高評価につながっているようだ。
2023年度の商品政策と新たなブランド体系
イオントップバリュは、2023年度の商品政策として「インフレ化での価格戦略」「独自価値商品の創造」「環境・社会への取組み促進」の3つを挙げる。これらを新たなブランド体系に当てはめ推進する。
イオンの価格戦略に関して土谷氏は「イオンの基本姿勢として、常にお客様に寄り添って、お客様の生活をサポートするべく、生活必需品でのプライスリーダーシップを取っていく。グループのスケールメリットを活用した、商品開発・調達を強化して、お客様にとって必要のないものをいかに省くかを取引先と一緒に考え、価格維持に努めていく。信頼を裏切るようなステルス値上げやスペックダウンは行わないと宣言する。信頼関係は何よりも大事だ」とコメント。引き続き価格維持に努めながら、誠実に向き合っていく姿勢を見せた。

イオン 執行役副社長 商品担当 兼 イオントップバリュ 代表取締役社長 土谷 美津子氏
「独自価値商品の創造」については、トップバリュを中心に新しいカテゴリーの商品開発をしていく。環境変化・世帯・価値観の変化による新しいニーズを取り込んだ商品開発を行う。「環境・社会への取組み促進」は、3R(へらす、くり返し使う、リサイクル)の取組みの推進、オーガニック商品の拡大を目指す。30周年を迎える「トップバリュ グリーンアイ」のもと、環境配慮商品のトップランナーとしてのさらに進化していく。
新たなブランド体系は4つの共通価値である「おいしさ」「ヘルス&ウェルネス」「サステナブル」「価格」のもと、3つのブランドの役割を整理。全アイテムの50%に相当する約2,500品目の商品を新発売・リニューアルを実施する。
「トップバリュ」は、「さあ、ワクワクするほうへ!」というタグラインでとにかくワクワクする商品、本当に美味しい、本当に面白い商品を開発。「トップバリュ グリーンアイ」は、「もっと安心、もっとやさしく」というタグラインで、自然環境の持続可能性を追求。「ベストプライス」は、ブランドロゴを刷新するとともに「今日も明日も、ほしいもの」とタグラインも変更。
イオントップバリュ 取締役副社長の森氏は、「アフターコロナ、お客様の価値観が変化していく中で、新しいブランド体系で新しいブランディングを実施していく。いままではNBと同等品質以上と言ってきたが、今後はさらに美味しく、さらに環境がいい、さらにいろんな価値が入っているよという商品を出していきたい。当然値頃な価格で毎日買っていただけることも重視する。
我々はいま、世代別であったり性別といったセグメントから価値観のセグメントに変えて商品開発をしている。特にこだわり、洗練上質。定番・安心というセグメントは、50代〜60代は構成比が40%〜50%近いが、MZ世代は5%にとどまる。そういった世代にしっかり届けていきたい」
3月16日に発売した。「トップバリュ もぐもぐ味わうスープ」は、新たなターゲットに向けて開発された商品だ。同日より幾田りらの新曲を採用した新CMの放送も開始した。
「“徒歩0分のレストラン”というコンセプトのもと、本当に具沢さんで、もぐもぐと味わえる。ディナーや忙しい朝の食事としてもご活用いただける。11種類を一気に発売させていただく。レストランに負けない味をお届けする」(森氏)
減少する若者世代に向けた商品開発をなぜするのかと疑問を呈された土谷氏は「いつの時代でも文化を作るのは若い人。若い人が作った文化に我々は一緒にやっていくことが大事。こう言った方々の嗜好・考え方に合致させていただくことが、トップバリュの未来につながっていく」とコメント。これからの当たり前も見据えて商品開発は続いていく。
TOPVALU(トップバリュ)
https://www.topvalu.net/