リクルートテクノロジーズは、イスラエルのスタートアップinfuse Location社と技術協力し、屋内測位技術の共同検証プロジェクトを2月から開始した。
将来的にリクルートの多様なビジネス領域に応用できるよう、実利用を見据えたサービス開発の可能性を探ることを目的としている。
専用機器不要の屋内測位技術を検証
今回の共同検証プロジェクトは、正確な位置情報の取得が難しいとされる屋内において、特別な機器の導入を必要とせずに、高い精度で位置情報の把握を実現する屋内測位技術の検証を目的としたものだ。
現状屋内において、正確な位置情報を把握するために用いられるケースが多いのが、ビーコン端末。しかし、端末の購入が必要なほか、設置場所の調整、定期的な機器管理のコストが発生するため、導入ハードルが存在するのも事実だ。広い範囲では多くのビーコン端末が必要になるため、さらに難易度は上がる。
リクルートが目をつけたのは、Wi-Fiや地磁気、ジャイロセンサーなど、一般的なスマートフォンに搭載されているセンサーを組み合わせて正確な場所を測位する技術だ。
主にWi-Fiを活用し、足りない部分を地磁気やジャイロセンサーなどのデータで補完することで、正確な位置を割り出すことができる。
以下は建物内におけるWi-Fiの状況を表したグラフ。赤い部分はWi-Fiだけで正確に位置が把握できる部分で、緑色の部分はWi-Fiだけでは位置の精度に誤差が生まれやすい、情報が不十分な領域となる。
導入する際には、この弱い部分を地磁気やジャイロセンサーのデータを事前に計測することで補い、建物全体で利用者の正確な位置を高い精度で割り出せるようにしている。
実証実験では平均誤差3mで測定
大規模イベント施設・オフィス・ショッピングモールなどの計6会場、合計10回実施した検証では平均誤差3m程度で屋内位置情報の把握ができることが確認できたという。
実際にデモアプリを使用して、どの程度正確に位置を把握できるかをリクルート社内で試させてもらったが、かなり細かい精度で現在地を把握できていることが確認できた。たまに追随が遅れてしまうケースはあったが、大きくブレてしまうようなことはなかった。
エレベータで別の階に移動すれば、それを把握することができるため、階をまたいだナビゲーションも可能。3m四方のジオフェンスも設定できるため、特定のエリアに入った際にメッセージを表示するといったこともできる。もちろん、しばらく滞在した場合にのみ表示といったこともできるため、興味を持った利用者のみにアクションすることも可能だ。
ちなみにこのデモのために新たな機器の設置はしておらず、元からあったWi-Fiのアクセスポイントのみを利用しているとのことだった。
まだ、具体的にどこかに導入を進めるという段階ではないが、合同説明会や展示イベント内でのナビゲーションや来場者情報の収集などで活用していく想定だ。
今後はオンラインとオフラインをまたいだユーザー行動の把握や、オフラインの行動に応じた接客などの活用を検討していく。