スマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」が復興支援の一環で開催したイベントにおいて、宮崎県における経済効果が約20億円にのぼったことが同県の発表により明らかとなった。
11日間で約10万人が石巻市に訪問
11月11日、ナイアンティックは復興支援の一環で東日本大震災の被災地である岩手県・宮城県・福島県の沿岸部において、「ポケモンGO」のレアキャラである「ラプラス」が多く出現するイベントを実施した。
宮城県の石巻市に関しては、特に多く「ラプラス」が出現するエリアとなり、実質的にイベントの中心地となった。イベントが実施された11日〜21日までの11日間に、石巻市に訪れた観光客は約10万人。ネット予約が可能な宿泊施設に関しては、石巻市やその周辺エリアのホテルは数日前からほぼ満室の状態となり、夜行バスもあまり空きがない状態となる程だった。「宿がなくてマンガ喫茶で一夜を過ごした」「車で寝泊まりした」というツイートも多く見られ、キャパシティを超える観光客が訪れていた。
宮城県は、観光客入込数と宮城県観光客の平均消費額を使用し、この期間の経済効果が約20億円だったと算出した。
宮城県の推計によると、この金額はサッカーのJ1リーグに所属するべガルダ仙台の2015年の年間の経済効果22億円に匹敵する規模となる。(参考資料:ベガルタ仙台の経済効果について)
11月12日には、県が石巻市で実施したイベント「ポケストップ追加企画 Explore Miyagi」にも1万人を超える人々が来場した。
大きな経済効果と、人気すぎるゆえの課題も
「ポケモンGO」において、エリアを限定した初のイベントとなった今回のイベントは、「ポケモンGO」が持つ「人を動かす力」が示されたものとなった。
平均して1日あたり1万人が流入した石巻市だが、街の飲食店は満席もしくは行列を作っている店舗がいたるところで見られ、忙しそうに切り盛りしていた。
その一方で、人が多すぎるがゆえの混乱も見られた。歩道は人で溢れ、人の流れに逆らうのが困難な場面が多くあったほか、車で移動する人も多く、いたるところで渋滞が発生していた。
「ポケモンGO」を楽しむユーザーにとっては許容できる範囲であっても、現地の人の生活の妨げになってしまった面も否めない。
ただ、期間中宮城県に直接寄せられたクレームは20件ほどだったという。現地の状況からして、警察や市役所なども含めるともっと大きな数字になることも想定されるが、どの程度現地の人に負担となってしまったかは、なかなか計りづらい面がある。
宮城県観光課は「観光客が増えたのはありがたかったが、迷惑になってしまった面があったのも事実。今回生まれた要望や課題に関しては、今後もナイアンティック社と協議していく。」としている。
楽しみながら観光ができるミッションの導入に期待
私自身、現地には無計画ながらも観光もしたいと考えて訪れたが、結果的に「ポケモンGO」を楽しんでいるだけで、あっという間に夜になってしまった。後悔先に立たずで、後ろ髪を引かれる思いで石巻を後にしたが、こんなことにならないためにも「ポケモンGOを楽しんでいたら、いつの間にか名所を巡れていた」となる仕組みができるのが理想的だ。
開発元のナイアンティック社が提供するもう一つのアプリ「Ingress(イングレス)」には、特定の場所を巡ることで達成できる様々なミッションが作成されており、利用者はミッションに合わせた散策を楽しむことができる。
「ポケモンGO」にもこのようなミッションが導入されれば、楽しみながら観光をすることができ、より良い人の動きが生まれることは間違いないだろう。
現状、参加する人が多すぎるという問題はあるものの、人をここまで動かせるサービスは他に見当たらない。そのエネルギーが良い方向に向かうことを期待したい。