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ヤマト、オープン型宅配ロッカー「PUDO」を提供開始 ー 2022年度中に5000台の設置を目指す

ヤマト運輸は、フランスのネオポスト傘下のネオポストシッピングと合弁会社を設立し、オープン型宅配ロッカー「PUDO(プドー)」の提供を開始することを発表した。
新会社の名称はPackcity Japan株式会社で、設立は5月11日。他社の宅配事業者も利用できるオープン型宅配ロッカーを駅やバスターミナルなどに設置し、2022年度中に5,000台の展開を目指す。
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年間7億件を超える再配達対象の荷物

2015年に届けられた宅配便は約36億件。国土交通省の調査によると、そのうち約2割が再配達の対象になっているという。つまり7億件を超える荷物が再配達されていることになる。
今後通販サイトの利用はさらに増え、宅配便の利用が増加することは確実だが、その一方でドライバー不足といった問題も現れている。
そのような状況の中、再配達を減らすなどして、無駄をなくしていくことは大きな課題となっており、その一つの手段として期待されているのが、1度で確実に届けることができる宅配ロッカーとなる。
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ヤマト運輸 代表取締役社長 長尾裕氏

これまで公共の場に展開されてきた宅配ロッカーは、特定の事業者のサービスに限定したものが多かった。ヤマトとしてもその方向も検討したが、自社に限定したロッカーを展開するのは問題があると考えていたようだ。
ヤマト運輸代表の長尾氏は「様々な事業者が自社のサービスためだけの利用に限定したロッカーをいたるところに設置した場合、利用者にしてみれば非常に利用しにくい状況になると思いますし、世の中に稼働率の低いロッカーを大量に生み出されてしまうと考えています。欧州のある国では実際にそのようなことが起こっていると認識しています。我々はそのような未来を日本で作ってはいけないと考えました。
ただでさえ限られたスペースである公共の場を占有して、コスト負担も大きい宅配ロッカーを各社が設置していくというのは、社会にとっても、経済にとっても大きな無駄である考えています。」と語った。
採算面でも合わないと考えていたところ、フランスのネオポスト社が展開するオープン型の宅配ロッカーの存在を知り、両者で話し合いの末、今回のサービス提供に至っている。

オープン型宅配ロッカー「PUDO」は1列単位で事業者を割り当てる

オープン型の宅配ロッカー名称は「PUDO」。ECサイトで購入した商品の受け取りや、再配達の荷物の受け取りでの利用を想定したサービスだ。名称は「Pick Up & Drop Off station」の頭文字をとっている。
設置場所は、駅やバスターミナル、ショッピングモール、コインパーキングなどを想定しており、「不在が多い地域」などのニーズが高い場所に重点的に設置を進めていく。
現在具体的に設置が決まっているのは先日発表されたJR東日本の駅のみで、その他は調整中とのことだ。
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左が屋内型、右が屋外型

取り扱う荷物は、縦横高さ3辺計が100cm以内で、重さ10kgまでが条件となる。貴重品を除く常温商品のみが対象だ。
「PUDO」のビジネスモデルは、ロッカーを利用する事業者からのレンタル料収入によるものになる。縦1列単位でロッカーを事業者に貸し出し、その事業者専用の列として契約していく想定だ。
当初は宅配事業者のみを対象として提供するが、将来的にはECサイト事業者やリアル店舗を展開する事業者など、様々な事業者に提供していく方針だ。
ロッカーは2列から最大37列まで増やせるとのこと。1列単位の貸し出しということで、効率性が気になるところだが、フランスでは、ロッカーを1個単位で貸し出したり、荷物預かりベースでの課金といった形でも提供しているようだ。今後状況によって柔軟に対応していくものと思われる。

宅配ロッカーの利用方法

宅配ロッカーを利用すると、指定したロッカーに荷物が届いた際に開錠用の暗証番号がメールで届くため、その暗証番号を使って好きなタイミングで宅配ロッカーを開錠して受け取ることができる。
受け取る際は、4桁の2つの暗証番号の入力と、タッチパネルでのサインを求められる。
下記動画は事業者と消費者それぞれの利用イメージだ。

昨年秋から1,000人を対象にテストを実施

昨年の秋から東京メトロの協力のもと、5つの駅で試験運用を実施。佐川急便も参加のうえサービスを提供してきたところ、以下のような傾向が見えたという。

  • ロッカーでの引き取りの時間帯は21時以降が44%で圧倒的に多い。
    次いで17時〜21時の37%となる。
  • eコマースの比率が高い(約6割)
  • 木曜日と金曜日の受け取りが多い
    (週末に受けとるための時間を使いたくないのではないか)
  • 3割がリピーター(3割の利用者が全体の件数の5割を占めた)

宅配事業者が営業をしていない時間帯の利用が多く、リピートする人は何度も使っているという傾向があることから、特定の人にかなりマッチするサービスであることが伺える。
ECサイトから宅配ロッカーを指定する場合は、ECサイト側で「PUDO」を選択できるよう対応する必要があるが、ヤマト運輸が提供するクロネコメンバーズの会員であれば、ECサイトが対応していなくても、宅配ロッカーにダイレクトに配送してもらう方法もある。
普通に自宅に配送先を指定し、「お届け予定eメール」が届いたタイミングで、配送先をロッカーに切り替える形だ。
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なお、ドライバーが宅配ロッカーに配達してから、約7割が24時間以内に受け取ったとのこと。
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公共の場に設置される宅配ロッカーはこれまでも様々な事業者によって提供されてきたが、なかなか設置台数は増えず、特定のサービスに限定していることもあり、多くの人にとっては使いたくても使えない現状がある。
オープン型での展開ということで、これが宅配ロッカー普及の大きな足がかりになることが期待される。
まだ利用する宅配事業者とは交渉を続けている段階とのことだが、佐川急便や日本郵便、日本通運、西濃運輸の名前が出ていた。これらの事業者と契約が進んで行くことになりそうだ。
Packcity Japanでの黒字は3年目を目処にしているという。その頃には利用者にとって宅配ロッカーという選択肢が当たり前になっているのだろうか。これからが楽しみだ。
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左から、ヤマトホールディングス代表の山内雅喜氏、ヤマト運輸代表の長尾裕氏、
Packcity Japan副社長の阿部珠樹氏、Packcity Japan代表のジャン・ロラン・リュケ氏、
ネオポストシッピング代表のアラン・フェラ氏、ネオポスト代表のドゥニ・ティエリ氏
イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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