INTERVIEW

【インタビュー】「競合は現金払い、キャッシュレスな世界にしたい」コイニー代表 佐俣奈緒子(後編)

コイニー株式会社 代表取締役社長の佐俣奈緒子氏にスマートフォン決済や「Coiney(コイニー)」の現状について伺いました。
今回は「【インタビュー】「決済のルールを変えるのがスマホ決済の本質」コイニー代表 佐俣奈緒子(中編)」の続きとなる後編をお届けします。
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競合は現金払い

―― SquareやPayPal Hereなど、どんどん競合が出てきていて、決済サービスが話題になることも多くなってきていますが、いまの状況をどのように感じていますか。

佐俣:市場を作るってところで考えると、一社で新しいことに取り組んでいくのって、なかなか難しいことだと思っていて、こういう風に複数社出てくることは、とてもいいことなんじゃないかと思っています。
もちろんその中で、最も選ばれるサービスを我々自身が作っていくことが、お客さんに対しても重要だと思っているんですけども、こういう新しい物を広めるってどうしても時間とコストがかかるものなので、市場が生まれるっていうことは良いと思っています。
一方で、日本ってなんだかんだ現金が強い国で、こういうサービスって、スマートフォン決済同士で競争しているというよりは、現金に比べてどういうメリットがあるのかとか、現金で払うか、カードで払うかってところが、実は一番大きい代替性になると思っているので、広い意味での競合でいくと、対現金を置き換えたいというところが強くあります。
そういう意味だと広いマーケットが眠っていると思うので、横を見ながら動くっていうよりは、どうやったら購買行動自体が、今よりもっと良くなるかっていうところを見ているっていうのが強いですね。

―― Coineyの今後の展開を聞かせてください。

coiney7佐俣:タブレット型のPOSというのが我々の周辺で成り立ち始めていて、そこは既存のいわゆるPOS自体をタブレット化することによって簡単に商品管理とか、売上分析などができるものなんですけども、そこに対して、我々は決済の部分のみを提供しています。我々自身が決済部分を担ってはいるんですけども、こういう風に外部連携を行っていきます。
今回はPOSですけども、先日はNTT東日本さんと組ませていただいたりですとか、我々単体で、お店の方にサービスを届けるっていうよりは、ニーズを満たすために、システム的な連携をしながら届けていきたいと思っています。
この拡張性みたいなものは、やはり目立ってくるんじゃないかと思っていますし、我々自身も注力していきたいと思っています。
POSってどうしても業種ごとに別れていたりするぐらい細かいんですよ。お花屋さん専用POSとか、ケーキ屋さん専用POSとか、美容院専用POSとか、実は細分化されていて、我々が仮にレジ出しますっていっても、おそらくそれって、ある一部分の業種の方々にしか刺さらないものになると思ってます。
そういう中で、それぞれの専門性を持った事業者さん と連携することによって、より細かいニーズを拾えるんじゃないかと思っているので、我々は、我々のものを出して終わりというわけではなくて、組み込んでいくことにも注力していきたいと思います。

―― POSレジが急に続々と出てきているのは置き換えが始まっているんでしょうか。

佐俣:おそらく、新規で出店されるところに関しては、タブレットで管理することが増えているのかもしれないんですが、どちらかというと、これも新しいシチュエーションに入っていくことが多いと思っていて、意外とレジがない業種ってあるんですね。
例えば、飲食でもレジじゃなくって、電卓もしくはパソコンとキャッシュドロア(キャッシュを管理するもの)でやっているところがあります。不動産とか、ちょっとした習い事とか、医療もそうですね。そこって、タブレットなどで管理したほうが管理しやすかったりとか、持ち運べたりってところもあるので、私が見ている限りだと、新しいシチュエーションに入っていくケースが増えているのかなぁと思います。

―― タブレットのほうが、コスト的にも将来性にも良いですよね。

佐俣:POSってどうしてもこれまで非常に高価なもので、高価な分、すごく機能がたくさんあるんですけども、一方で使いこなせないという問題もありました。
あるいは値段で躊躇した人っていっぱいいると思っていて、いわゆるレジスターとPOSの違いって商品の登録の細かさだったりとか、それによる分析の違いだったりすると思うんですけど、比較的安く導入して分析までかけられるものに対するニーズって言うのは増えているんじゃないかと思っているので、POS自体が置き換わるっていうよりは、無かったところ、あるいはレジだけ使っていたところ、電卓使っていたところが導入をはじめているんじゃないかと思っています。

キャッシュレスな世界にしたい

―― どのような世界を実現したいかをお聞かせいただけますか。

佐俣:究極なところでいくと、キャッシュレスな世界がいいなと思っています
私自身、あんまり現金が好きではなくて、やりとりするコストもあるし、無くなったときに引き出さなきゃいけなかったりだとか、いろんなコストがあって意外と不便なものだと思っています。
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現金ってそもそも、硬貨だったり紙幣になっているのって、価値の交換なだけで、本質的にはデジタルの数字でも全く問題ないと思っているので、キャッシュを置き換えるようなサービスをどんどん作っていきたいと思っているんですけど、日本っていうマーケットで絞って考えると、それこそSuicaがあったりとか、おサイフケータイがあったりだとか、クレジットカードがあったりだとか、払うソリューションって比較的いっぱいあるんです。
ただ、使える場所とか、使えるシチュエーションが少なすぎるので、そこを増やすことによって、自分が普段キャッシュを使う量ってもっと減ってくると思っています。
とにかく、キャッシュ以外の決済手段を使えるお店、事業者さんをどんどん増やすって言うのがまずは一旦の目標ですね。根源にあるのはキャッシュレスにしたいということです。

―― スワイプ以外の展開は考えているんでしょうか。

佐俣:中長期で考えるとあると思うですが、まずはスワイプでと思っています。これには理由があって、消費者側がこういう新しい決済手段に慣れるのって少し時間がかかると思っていて、いま我々のサービスをお店が入れて、これ自体は既存のものより新しいんですけど、消費者サイドがお店でカードで払いますと言って、お店の人が何かの機械で読むってところって、いままでと変わらないんですね。
これを例えば「カメラで読み取ります」とか、「消費者側もアカウントを作ってください」ってなると、非常にスケーラビリティが落ちるんじゃないかなぁというところと、やっぱり新しいものに対する嫌悪感があると思うんです。
お店側と消費者側と両方開拓していくのは結構大変なので、まずは消費者サイドはいままでと同じアクティビティでいいですと。それがもし一般的に慣れてきた場合に、毎回カード出さなくていいですとか、違った払い方になってくるのかと思うので、当面はこのやり方を続けたいと思ってます。
「Suica」って良い事例だと思っていて、「モバイルSuica」が出たのって、結構早かったじゃないですか、「Suica」利用者の70%がプラスチックカードを持っているんですね。ほんとは持たないほうが便利なはずなのに、あのカードの方が便利だと思っているんですよ。
それと同じことがクレジットカードでも起こるんじゃないかと思っていて、たぶん一部の人たちにはおサイフケータイってすごく支持されてますし、それと同じように、カード自体がなくなって、携帯だけで決済できる時代がくると思うんですけど、やっぱり物への安心感ってなかなかぶらすことができないなと思うので、そういう意味でも、こういう読むためのツールっていうのは意外と必要になり続けるんじゃないかと思っています。
私もいまだにSuicaはプラスチックで持っていますし、たぶん(IT業界にいる)私たちがこうなんだとしたら、クレジットカード自体はおそらくそのままで持ち続ける人って10年単位で見ると、まだまだ居ると思っていて、ただ、それが超えて、政策的に変わるとか、画期的なものに移っていくようになると、はじめてちょっと置き換わっていくと思っているので、まだまだ3年、5年の世界だと残ると思います。
不便だなぁと思いつつ、財布の中味って10年前より増えている気がするんですよね
―― 確かに私もいかに財布をスリムにするかが課題になっていますが、なかなか改善できないですね(笑)

―― 最後に新オフィスのことを聞かせてください。

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佐俣:前のオフィスでは、自分たちがお客様の立場に立ってサービスを使うことがそんなに多くないことを、ずっと課題に感じていました。
商売をする人の立場に立って製品開発をしないことが、いろんなところで遅れを取りはじめるんじゃないかと思っていたんです。
そこで、新しいオフィスはお店の気持ちになれるような場所にしたいと考えました。
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自分たちが日々使うことを考えた時に、飲み物なら毎日飲むので、オフィスに常備してある飲み物を、Coineyの決済で買うようにして、プロダクトを使うことによって、使いにくいとかここ使いやすいねとか、気づきを得られる場所にしたいと思ったんです。
なので、そういうイメージが湧くようなオフィスにしたいっていうのが元々の目的です。

社内で販売するドリンクはCoineyの決済で購入する

社内で販売するドリンクはCoineyの決済で購入する


それこそ和室があって、ちょっと料亭っぽいところで、そこにほんとに接客しながら決済するときは、どうなるのかみたいなことを試すとしても、その場で実際やってみればいいってこともできますし、テーマを持って、いくつか部屋を作っているので、壁がすごいカードっぽくなっていて、日々の生活の中で、自分たちが決済を提供しているところのマインドを作っていくみたいなところもありますし、とにかく事業者の方々に近いような目線で物を作るっていうところをフォーカスしたっていうのがこのオフィスの目的です。
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引っ越してきて、日々使うようになって、プロダクトの改善が早くなってますし、実際、市場に投下する前に、まずは自分たちが使うってことができるようになったので、そこで自分たちが使って問題がなかったものを世の中に出すっていうサイクルも出来始めていて、非常に良かったなと思っています。
―― ありがとうございました。

編集後記

3回に渡ってお届けしたインタビューはいかがだったでしょうか。
今回のインタビューでは、コイニー社が提供するサービスが、クレジットカード決済をより様々なシーンで利用することを可能にしてくれるサービスであり、決済スピードを早めてくれるサービスであることがわかりました。
今後日本でもクレジットカード決済が、どこでも当たり前に使えるようになっていくのでしょうか。佐俣社長が目指すキャッシュレスな世界にどんどん近づいていくことを期待したいですね。


Coiney(コイニー)
https://coiney.com/

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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