INTERVIEW

【インタビュー】「1秒で完了する決済を実現」コイニー代表 佐俣奈緒子氏(前編)

2013年はスマートフォンやタブレットを決済端末として利用可能にする「スマートフォン決済」と呼ばれるサービスが次々と登場しました。
「Square」や「PayPal」など、海外発のサービスが多い中、日本のベンチャー企業である「コイニー」が2013年4月10日にスマートフォン決済のサービスを開始しています。
今回は、2014年4月10日にサービス開始から1周年を迎え、新オフィスで2年目をスタートさせたコイニー株式会社 代表取締役社長の佐俣奈緒子氏にスマートフォン決済や「Coiney(コイニー)」の現状について伺いました。
インタビューの模様を前編・中編・後編の3回に渡ってお届けします。
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―― Coineyのサービスについて改めて教えてください。

佐俣:スマートフォン決済とかスマホ決済と言われているサービスで、タブレットやスマートフォンのイヤホンジャックに「Coineyリーダー」を刺して決済端末にするもので、iOSとAndroidに対応しています。
お店が利用するサービスで、これを使ってクレジットカード決済を行うことができます。
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従来クレジットカードは、レジの隣にある機械で読んだり、レジに一体型になっているもので読んでいましたが、これがスマートデバイスに置き換わるというものです。
これまでは端末が高価で、審査が通らない、審査までの時間が長い、手数料が高いなどのいろいろな問題がありましたが、まずは申し込んだらすぐに使えるサービスにするべく取り組み、最短2営業日で使えるようにしました
いままでは、会社の設立年月日の期間や業種、規模などで審査がかけられて、手数料も「あなたの場合は何%ですよ」というような形で決まっていて、ブラックボックスだったんですね。例えば、一般消費者がローンを借りるときに基準がわからないのと一緒で。
Coineyは、手数料を3.24%の一律で提供させて頂いているので、非常にクリアで、導入頂くときに検討がしやすいと思います。
入金のサイクルに関しても、これまで「末で締めて翌末で払います」とか、「15日で締めて末で払います」ということが多かったと思うのですが、Coineyでは、5日ごとに月6回締めて払うようにしているので、キャッシュフローという意味でもだいぶ改善がされてきているところがあります。
中小企業の方々にとって簡単にご利用頂けるような決済のソリューションとしてサービスを提供させて頂いています。

―― 5日ごとに締めるのはかなり頻繁なイメージがありますが、手数料はかかるのでしょうか。

佐俣:お店の方に「引き出し」の依頼を我々の方にかけて頂くと、翌営業日に着金する形になっていますが、1回の引き出しが10万円以上の場合は無料、10万円未満の場合には1回あたり200円を頂いています。

3週間かかっていた審査を2営業日に短縮

―― 審査をどのようにして早めることができたのでしょうか。

佐俣:審査を早めるにあたって、我々の後ろにはカード会社であるクレディセゾンさんがいて、ある意味一緒に協業しながらサービスを提供しています。
通常の審査は、これまで決められたフローがあって、それを部署で持ちまわって審査していました。「この部分は大丈夫か」、OKだったら「次の部分は大丈夫か」という、部署で持ちまわっていた部分など、専門チームを置いて、とにかくオペレーションを見直した結果、3週間と言われていた部分を最短2営業日で返せるようになりました。審査の内容を変えたというよりは、オペレーションを見直したところが大きいです。
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実際に日々お使い頂く上で、お使い頂く内容によって、モニタリングもしています。
例えば、過去2ヶ月の決済額よりも、いきなり売上が上がることがあります。
これはいろんな要因があって、例えば当日催事をやっていてお客さんいっぱい来たとか、12月に多かったのが忘年会で団体客が入ったとか、そういったことがあるので、そういう異常値を社内ですべて感知していて、決済の中では途上与信っていうんですけど、お使いいただく中で要所要所で審査を別でかけていく、リアルタイムでモニタリングをすることによって、より精度を高く、安心してお使いいただけるようにしています。

―― Coineyでの与信はどのように行われているのでしょうか?

佐俣:2つあって、まずお店に対する与信の審査は最初にやります。お店の営業実態があるのか、代表者が過去に何か問題を起こしてないかなど、個人の与信も含めて審査はしています。
お使いいただくクレジットカードの与信は1回、1回取っています。インターネットを通してカード会社さんには必ずカードの信頼性の確認をしています。タクシーでクレジットカードを使うと時間がかかる場合がありますが、カード会社との通信をずっと繰り返されて待つんですが、我々の場合は数秒で決済ができるので、お客様をお待たせすることなく、非常にスピーディーに決済を完了します。
―― 実際にどの程度のスピードで決済が完了できるのかを見せて頂きました。カードの読み込みから、決済完了までを撮影したものです。私の感覚でいえば、相当早いと感じました。

数秒での決済を実現。サインレスを実現しているのではCoineyだけ

―― スピードはSuicaを使うぐらいの感じですね。

佐俣:だいたい、サインレスの場合は1、2秒ですね。
1万円以下の決済に関してはサインレスを設定できるので、サインをお客様から頂くことなく決済できます。
サインが必要な場合に関しては、慣れないうちはどうしてもお店からお客様に「こうやって書きますよ」とか、「安全ですよ」ってことを、説明しなければいけないので、少し時間がかかる場合がありますね。
少額決済に関しては、スピーディーに行いたいお店に対してサインレスを提供しています。イベントとかで、お客様が並ぶ場合とか、カフェなどで数百円単位だから、そこまでオペレーションに負荷をかけたくないといった場合に好まれて使われてます。
スマホ決済でサインレスを提供しているのはCoineyだけなんです。

―― タクシーに是非導入して欲しいですね。下手するとクレジットカード決済用の端末を出すだけでも時間かかりますよね。(笑)

佐俣:タクシーによく乗るので、遅いなーと思いながら、サインする伝票を出てくるのを待っていますね。(笑)
スピードっていう意味では、日本は特に通信が整ってきているので、首都圏中心で考えると、だいぶ早いスピードで提供できるんじゃないかと思います。
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―― なぜこの速さは実現できたのでしょうか。

佐俣:何が違うかというと、よくある決済端末は決済用に通信領域を結構絞っているので、それで遅くなっているケースがあります。
それこそ、タクシーに関してはよくあるケースで使っている場合があると思いますが、通信網を抑えているので非常に遅いんですね。
ただ、クレジットカード決済時のパケットは少ないので、その分安い通信量でできます。我々の場合は、既存の4Gでやっているので、いわゆる通常のインターネットと同じなので、早いっていう差があります。
遅いのは通信だけの問題で、カード会社の承認が遅いとか、そういうことではないんです

―― 通信スピードの問題が大きかったんですね。

佐俣:あれは結構ストレスフルというか、待っている時間が長いんですよね。なので、そこはもっと改善の余地があるんじゃないかと思っています。

―― 日本はアメリカと比べるとクレジットカードを使う文化がなくて、少額決済の場合などは使うのが申し訳ないのではないかと思ってしまうのですが、そこはかなり改善されるということですね。

佐俣:改善されてくると思います。端末がスマートフォンとかタブレットに置き変わってくると、いまぐらいの回線スピードで使えるようになるので、かつサインレスになると、それこそSuicaを使うとか、キャッシュで払うのと同じぐらいになります。
キャッシュもお釣りがあると意外と時間が掛かるんですけど、タクシーでも気軽に運転手さんがクレジットカード決済ができる状態になるので、払う方も手間取らずに払えるようになると思います。
社内で使っている回線も一般家庭で使っているものと同じですし、都内はだいたい4Gがつながるようになっているので、これぐらいのスピード感で使えたらと思ってます。仮に3Gだとしても、それほどまでには速さの違いは感じないですね。

―― 従来のクレジットカード決済で必要な据置型の決済端末の値段はどれぐらいなんでしょうか。

佐俣:据置型の決済端末の値段は、カード会社さんが安くしたり、無料にするケースもありますが、平均すると10万円ぐらいと言われています。
ただ、最近は電子マネーカードやIC型のカードを読めるようになっていて、すごく高機能化が進んでいるので、そうするとさらに高くなる傾向にあります。
でも、実際カードを読むところでいくと、我々がこういうものをいま無料でお出ししているものと、いわゆる既存の決済端末は対して機能が変わらないので、そこはこれまで、中小の方にとってはすごく負担が大きかったものだと思います。
―― 実際に、個人商店の方と話した際にも、電子マネーやIC型のカードが使えた方がよいのはわかっているものの、投資した費用を回収できるのかどうかがわからないため、なかなか踏ん切りがつかないといった悩みを持っていたそうです。
その点Coineyの場合は、手元にあるスマホかタブレット端末で導入できるので、導入ハードルの低さが際立っています。

サインのデジタル化で店舗の負担も軽減

―― こんなに早く決済できるのであれば、利用者としても是非広まって欲しいですね。

佐俣:カードを使える場所って、日本だとまだまだ限られているので広めたいっていうのと、クレジットカード決済を既に導入している場所に関しても、スピード感だとか、実際に利用するお店側の管理の手間を軽減するっていう点で、使って頂きたいですね。
いまってサインを紙に書くじゃないですか。あの紙ってお店側が保管をして、クレジットカード会社にあれを送らないといけないんですよね。保管コストが意外とあって、なくしたら問題になりますし。
でも、Coineyの場合はサインがデータになっているので、全く事業者さん側が関与することなく、我々が保管し、カード会社さんに渡しているので、保管コストだったり、それを郵送するオペレーションの手間も全くないので、とにかくどんどんお客様に対応して売上を上げて頂ければ、あとは自動化します。というやり方なので、既存の紙で書くってところから、だいぶコストが減ってくるんじゃないかと思っています。
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見えにくいところなんですけど、最近大手さんがサイン専用のタブレット端末を導入しているんですが、たぶんあれはその後の管理の手間を削減するためだと思うんですよね。それを全部データ化することで、リアルタイムに送っています。
タブレットとかスマートフォンでは最初から画面があるので、そこに書けば良いというのが、まだまだ我々自身もお伝えしきれてない事業者さん側のメリットとなります。

―― サインの信頼性が問題になることはあるんでしょうか。

佐俣:結論からいくと、問題ないです。
日本って特にクレジットカードの事故が少ない国で、サインが問題になることはほとんどないんです。
ただ、やっぱりレギュレーションの中で、本人が使ったという証拠としてサインは取っておく必要があって、サインしたデータは7年間保管してくださいっていうルールがあるので、我々もきちんと保管していますし、何か事故があったときに、この日のこのお店でこの時間にあった取引はこのサインですというのはいつでも出せるようにしています。
中編「決済のルールを変えるのがスマートフォン決済の本質」に続く。

編集後記

実はスマートフォン決済を実際に利用するのを見たのは初めてだったんですが、決済を完了するまでの速さに一番驚きました。導入の手軽さや、ポータブル性に注目が集まる事は多いですが、決済までのスピードが早いという面は、クレジットカード決済がさらに使われるようになっていくためには重要な要素のように思います。サインレスを提供しているのがCoineyだけというのもポイントになりますね。
是非、このスピード感を体感してみてください。


Coiney(コイニー)
https://coiney.com/

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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