INTERVIEW

【インタビュー】誰もがAmazonの仕入先となれるサービス「Amazonベンダーエクスプレス」

メーカーや卸売会社が最短1日でAmazonの仕入先となれるという新たなサービス「Amazonベンダーエクスプレス」。2月に開始したこのサービスを展開する狙いとは。
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最短1日でAmazonの仕入先として取引を開始できる

「Amazonベンダーエクスプレス」は、メーカーや卸売会社がオンラインで商品情報を登録し、Amazonのフルフィルメントセンターに商品を送付することにより、登録から発送まで最短1日でAmazonの仕入先として取引を開始できるサービス。登録した商品は「Amazonが販売・発送する商品」としてAmazonで販売される。
Amazonへの商品の卸売価格に関しても、ビッグデータの活用により、オンライン上で提示される形となっており、手続きは原則、オンラインで完結するようになっている。
Amazonが商品の保管・管理に加え、販売、発送、返品、利用客からの問い合わせにも24時間体制で対応。手数料などは一切かからず、商品も着払いでAmazonに発送すれば良いので、送料もかからない。
登録する商品に関しては、販売可能な商品カテゴリーかつ商品識別コードである「JANコード」が付与されている商品であれば登録することができる。
Amazonで販売実績がないものに関しては、まずは少量のサンプルを無料で提供する形となるが、商品が売れた場合は、卸売価格が支払われる形だ。
「Amazonベンダーエクスプレス」は、アメリカで2014年6月に開始し、その後2015年9月にイギリス、翌月の10月にドイツでもスタートし、日本は4番目に開始される国となる。
誰もがオンライン上でAmazonとの直接取引が可能になり、小規模なメーカーに新たな可能性を提供するサービス。今回は、アマゾン ジャパン ライフ&レジャー事業本部 新規開発事業部 事業部長 中谷公三氏と、リテール事業本部 シニア・テクニカルプログラムマネージャー 田丸知加氏に話を聞いた。
―― 「Amazonベンダーエクスプレス」の狙いをお聞かせください。
中谷:基本的には法人や個人事業主を問わず、比較的小規模なメーカーや卸売業を営む方を対象に、仕入れをさせていただくことが狙いです。
Amazonとしては、お客様に対して「地球上で最も豊富な品揃え」を提供するということを目指しておりますので、これまでお付き合いのなかった小規模にビジネスを展開している方々にお取引先になっていただくことによって、お客様がこれまでオンラインで買えなかったものもご注文いただけるようにしていきたいと考えています。
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左:アマゾン ジャパン 中谷公三氏

小規模な事業主さんですと、自分で販路を拡大したり、値付けをしたり、お客様への問い合わせに対応したり、というのはどうしても難しくなってくる面があります。そのような中で、Amazonがそれを全て引き受けて販売することは、これまでと違う切り口で、サービスの付加価値のバリエーションを増やすことができると考えています。
―― 先行して「Amazonベンダーエクスプレス」を導入した国ではどのような成果が生まれているのでしょうか。
中谷:商品点数が数万点増えた例があります。
Amazonのビジョンに基づいて、お客様に提供できる商品の品揃えをいかに増やせるかというところで、非常に有効なプラットフォームとなっています。
田丸:アメリカでは食品から始まったのですが、一番最初に登録された商品が地方のレストランを経営されているコックさんが作ったジャムの商品でした。
それまではネット販売をしておらず、ITの知識もお持ちではなかったのですが、素晴らしいジャムを是非アメリカ全土に広げたいという想いから、「Amazonベンダーエクスプレス」で商品を登録したところ、Amazon.comに掲載されて、州以外の遠い地域からも注文が入るようになりました。
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右:アマゾン ジャパン 田丸知加氏

出品サービスである「Amazonマーケットプレイス」をご利用いただいた場合、販売元は出品している企業になるので、在庫管理やお客様からのお問い合わせ対応をする必要があります。レストランを経営されているような人ですと、ずっとパソコンを見ているわけにもいかないので、中々難しかったようなのですね。
一度、商品登録していただくと、在庫管理や価格管理もすべてAmazonが行いますので、商品が販売されている間にも、コックさんは新しいジャムの開発にフォーカスすることができます。任せることができて、非常に良いサービスだということで、評価いただきました。
―― これまでメーカーがAmazonに販売してもらうにはどのような手続きが必要だったのでしょうか。
中谷:Amazonにはバイヤーがおりますので、バイヤーがメーカーに対面でお会いしたり、電話やEメールでやり取りをし、会社や商品を理解したうえで条件交渉をして、値段や仕入数を決めていきます。人が入っての交渉ごとなので、当然数日以上かかります。
「Amazonベンダーエクスプレス」は、メーカーや卸売会社がセルフサービスにより画面上で手続きでき、双方のプロセスを短縮することが可能です。商品登録から発送まで最短1日で手続きを完了させることができることも、お取引先にとっては大きなメリットだと思います。
ー Amazonベンダーエクスプレスに登録した事業者をどのように評価していくのでしょうか。
中谷:Amazonが評価する立場にはなくて、あくまでお客様の需要によって決まっていきます。
Amazonからお取引先への納入依頼の数量なども、お客様の需要によって変わっていくのは、他のAmazonの商品と同じです。
お客様からの需要が多く、ご注文の多い商品については、納入依頼も増えていきます。
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ー 卸売価格はどのように変化していくのでしょうか?
中谷:具体的なロジックはお話しできないのですが、基本的には類似商品の価格動向などを踏まえながら、適正な価格が提示される形になります。
ー 今後の計画をお聞かせください。
中谷:できるだけ多くの方に「Amazonベンダーエクスプレス」を知っていただくように色々な取り組みをしていこうと思っています。インターネット上でのプロモーションはもちろんなのですが、インターネットをあまり利用しない方にもご案内できるよう、各種展示会などオフラインの場所でも情報を発信するなどして、できるだけ多くの方々に使っていただきたいと思います。
ー ありがとうございました。
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左から、アマゾン ジャパン 中谷公三氏、田丸知加氏

編集後記

Amazonではこれまでも「Amazonマーケットプレイス」を通して、簡単に商品を販売することができ、様々な事業者に門戸が開かれた状態にあったと思うが、販売するためには価格調整・在庫管理・商品発送・問合せ対応など、様々な業務に対応しなければならない。
試しに売ってみようと考えても、これらに対応するためにはそれなりの準備が必要になり、手を出せずにいるメーカーも案外多いのではないだろうか。そういった意味でも「Amazonベンダーエクスプレス」がこれまでと違った商品の発掘に繋がることは大いに考えられそうだ。
「Amazonベンダーエクスプレス」がAmazonにどのような変化をもたらすのか注目していきたい。


Amazonベンダーエクスプレス
http://vendorexpress.amazon.co.jp/

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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