INTERVIEW

【インタビュー】「2015年、minneに積極投資する理由」GMOペパボ代表 佐藤健太郎氏

個人で手軽にハンドメイド作品の売買ができるハンドメイドマーケットプレイス「minne(ミンネ)」。サービスを展開するGMOペパボは、開始して4年目を迎えたこのサービスに、2015年積極的に投資することを2014年12月期の決算説明会の場で明らかにした。
GMOペパボの2014年12月期の純利益は4億1千万円だったが、この発表の中で2015年12月期の純利益を0円と予想。今年生まれる利益を「minne」に積極的に投資していく考えだ。
2015年2月14日からは、GMOペパボでも初となる「minne」のテレビCMを開始。その効果は早速現れており、CM開始後iPhoneアプリの無料総合ランキングで2位まで上昇、2月21日にはアプリのダウンロード数は100万ダウンロード突破している。

ハンドメイドカテゴリで頭一つ抜けた感のある「minne」

「minne」の2015年2月時点の作家数は8万7,000人、作品数は87万点と、ハンドメイドマーケットプレイスとしては最大の規模となっている。他社と比べても頭一つ抜けた存在となってきた。
まさにいま伸び盛りのサービスといえるが、このタイミングで「minne」に積極投資を決めた理由をGMOペパボ 代表取締役社長の佐藤健太郎氏に伺った。
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―― 2015年12月期の業績を利益ゼロ予想にして、minneへのプロモーションなど積極投資を決めました。その背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
佐藤:「minne」は最初PC向けに始めたのですが、スマホのユーザーさんも増えてきまして、スマホでの購入が上回ってきています。我々としても、スマホがこれからも伸びるだろうというのがまず前提としてあります。
「フリマアプリ」や「カスタマイズファッションコマース」などの、「スマホアプリ×EC」や「ファッションアプリ」の分野が広がってきていて、ダウンロード数が数百万というプレーヤーさんがいらっしゃる中で、我々としては、踏み込むのであればスマホアプリに注力する方が、今後の伸び代が大きいのではないかということがありました。
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もう一方で、レンタルサーバーをはじめたときからそうなのですが、我々はもともと個人の人たちの表現活動を支援してきています。我々のビジョンと将来性の部分で、ハンドメイドがいろんな人たちの表現活動であって、それをプラットフォームとして支援していくのが伸ばしていきたい領域になっています。
あとは、海外で「Etsy(エッツィ)」のように、ハンドメイドやクラフトなどのヴィンテージのマーケットプレイスで大きなものが存在するところを見ると、ここの領域の可能性がすごく大きいと判断しました。そこをスマホで伸ばしたいのと、やるからにはちゃんとマーケットとして確立させなくてはいけない部分で、半端にやっていても仕方ないところがあったのですね。であれば、2015年はそこに一点突破できるような形でやろうというのが、今回積極的な投資でいこうと判断した理由ですね。

1年でいろいろな面で伸長 作家数も約3倍に

―― 「minne」は、2014年1月には3万人ぐらいだった作家数が、2015年1月には8万4千人まで伸びています。この1年で急に伸びたのはどのような理由が考えられるのでしょうか。
佐藤:一気にブレイクスルーしたようなポイントは正直あまりなくてですね、どちらかというとじわじわとやってきたところがあります。「minne」自体はほとんど福岡をベースにしていたので、特に福岡のほうではリアルなイベントを毎週末開催したり、大きなところではビッグサイトでのイベントで我々も出店させていただいたりしました。
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リアルな接点を作るのは購入する方もですが、作家のツテを作るという目的もありました。あとはウェブのプロモーションをやったりとか、地道なマーケティングを続けてきたところがありますね。
「minne」で購入した人が、逆に作ってみようかなという気持ちになって、作家になられた方もいらっしゃいます。
―― スマホアプリは2013年10月とかなり早くから導入していますが、デバイスの閲覧比率ではブラウザが88%で、アプリが12%というのが意外に感じたのですが、これはどのような理由が考えられますか。
佐藤:ハンドメイドの作品をスマホアプリで買うことが、まだなかなか認知されていなかったということがありますね。結構早い段階でスマホのブラウザで閲覧できるウェブビューを提供していたので、アプリがなくてもスマホのブラウザ上で購入できるところが、アプリがまだ12%ぐらいになっている理由としてありますね。
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今回投資することに関して言うと、いままでのPCだけじゃなくてスマホアプリで購買させる数を増やそうというのが一つの狙いでもあったので、そこは今後効果が出るのではないかと思っていますね。

「minne」は女性の割合が9割 売れ筋はアクセサリー

―― 「minne」は、女性の割合が9割とお伺いしました。どのような作品が売れているのでしょうか。
佐藤:ジャンルではやっぱりアクセサリーが一番売れ筋ですね。これは完全に女性をターゲットにしたサイトのクオリティや、作家さんにそもそも女性が多い部分があるので、そこが一番大きい影響だと思います。また、ネットでの購買に強そうな女性たちが好みそうなジャンルは、やっぱりアクセサリーや雑貨だったので、最初からそこを攻めていったのも一つですね。
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これが逆に、雑多なジャンルになったりとか、特定の男性向けだったりとかに特化しちゃうと、今度はスケールしないなって部分もあったので、まずは一般の女性の方々でネットでのEC利用が多い人たち、作家さんに近い人たちを集めるという部分に特化させているのはありますね。
いまはどちらかというとアクセサリーとか、雑貨とかバッグとかそういったものが多いのですが、そのうちもう少しジャンルを広げていって、工芸のものだったりとか、家具みたいなものだったりも増やしていこうと思っています。
―― 購入される方も割とハンドメイドを自分でやられてる方が多いのでしょうか。
佐藤:購入する側は、特にハンドメイドだからということが決め手になっているのではないと思います。普通のお店で売っているようなものが、見劣りしないデザインで、そんなに高くないという点で使っていただいている方が多いですね。
あとは1点モノというのもあるので、個性だったりとか、他ではないものを買える優越感みたいな部分もあって、使われている方もいますね。特に昔から手芸が好きだったとかいう人たちばっかりではないですね。
―― 私はカスタマイズECに注目してるのですが、理由としては物が溢れてて、何買ってもそんなに目立たないというか、羨ましがられないという背景がある中、そういう一点物みたいなところがこれから求められるようになっていくのが今年だと思っているのですが、ハンドメイドってそこの側面が強いのではないかと思うのですが。
佐藤:おっしゃる通りですね。例えば、スマホのケースひとつとってもそうだと思うのですが、普通にお店で売っている物よりも、ネットで作家さんが作っている物のほうが「私だけの物」みたいになるし、普通に一般的に売られているものって無機質な感じがしてしまって、しかも誰かとかぶってしまったりしますよね。別にそんなに高くなく、でも自分しか持ってないみたいな所有欲も満たすところが、今後トレンドになっていくのではないかと思います。
―― 今回CM拝見したら、すごくおしゃれな女性のイメージが前面に出てて、世界観も実際に出品されてるものを揃える演出をされていましたけど、どういった層に打ち出していく狙いなのですか。
佐藤:「minne」はクオリティだったり世界観を大切にしているので、そこで同じような表現になるようにCMでは合わせていった感じですね。「minne」で出品されている作品も数十品用意しました。いま一番メインで使って頂いている方が、20代後半から30代40代の女性なのですね。こだわっているものが好きだったりとか、ナチュラルなものが好きだったりとか、という方たちです。
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作家を支援するスペースを開設予定

―― プロモーションでテレビCMを展開していますが、他に何か考えられていることってありますか。
佐藤:そうですね、プロモーションでいうとCMもそうですし、ウェブのマーケティングやイベントもいま積極的にやっています。
例えばいろいろなところで作家さんだったりとか、アプリをダウンロードしてくださる人たちを集めるために、バザーやフリマ、販売のイベントなどに我々のブースを出店させて頂いています。
「minne」の作家さんを何人かご招待して、「minne」ブースで販売するのは、いままでもずっとやってきていますね。直近でいいますと、手芸用品の小売大手の「藤久」さんと「ハンドメイド大賞」を去年初めて開きました。
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ハンドメイド大賞の授賞式(2015年2月15日に開催)

あとは、作家さん向けの、制作活動を支援するスペースを近いうちに始めようかなと思っています。
「minne」で作家になりたいのだけど、どうやって登録したらいいのかという初歩的なところもそうですし、作品作りの中でアドバイスが欲しいとか、こういう作品作りたいのだけど、この器具がないから借りに行こうとか、商品撮影するときに自宅だとなかなかいいのが撮れないので、撮影するためのスペースといったことができる場所を作ろうとしているところです。出来る限り作家さんにそういった場を開放させていただこうと思っています。
あとはワークショップみたいなものを、月1ぐらい開催できればと思っていますね。
―― ハンドメイド市場が日本でもっと伸びていくために、どういったことが必要だと考えていますか。
佐藤:そうですね、手芸のイメージから抜けださないといけないというのはあります。きちんとした品質のものが、そこまで高くない値段で買えることを、ある程度認知されないと、使う方も興味持たれる方も増えないと思っているので、まずそこをちゃんと作るのがひとつですね。ですので今回積極的にプロモーションしているのもそこです。
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イメージのところでは、ハンドメイド=チープなものではないということを伝えることが、CMを作る中でも一番イメージしたところです。
その次にちゃんと作れる作家さんに対しては、我々としてもちゃんと支援をしないといけないですし、ネットで売ることがわからない人もサポートする必要があります。空いた時間に作られるような、趣味が高じた人たちもそうなのですが、それで生計を立てているような人たちも、もう少しちゃんと連れてこないと、仕事として大きくならないと思っています。そこは次のチャレンジにしないといけない部分ですね。
例えば、工芸品や家具、クラフトみたいなものをちゃんと作られているような職人さんとか。そうすると、ネットで売買できるプラットフォームとしてはちゃんと確立されると思いますので、ニーズがちゃんと生み出せるのではないかなと思います。
―― 作家側と買う側両方、まだまだ伸ばしていく必要があるという。
佐藤:そうですね、どちらかだけが増えてもいけないので。買う人が増えすぎても、商品がなくてみんなやめてしまうのもありますし、少なすぎて作家さんは売れなくて続ける意味がなくなってしまうパターンもあるので、同じくらいのタイミングで成長させていかないといけないですし、新たなカテゴリーに関してもちゃんと同じタイミングでどっちも増えるようにしないといけないところはありますね。
―― 今後はどのような作家さんを増やしていきたいと考えていますか。
佐藤:今は女性向けのジャンル・カテゴリーが多いので、もう少し男性向けのものであったりとか、性別関係ないようなものを作られている作家さんを増やしたいですね。マーケットプレイスとして大きくなっていけば、そういった人たちのフォローアップをできる体制というのも作れると思っていますので。
先ほどもお話しましたが、家具とか、そういった部分のジャンルをもう少し広げたいですね。

良い物を適正な価格で売買できるプラットフォームに

―― 最後に今後の展望をお願いします。
佐藤:我々として一番は、ハンドメイドのマーケットプレイスというよりはプラットフォームを、ちゃんと国内で作りたいので、まずはそこを目指すのがひとつですね。
それが結果的に、作家の方たちのモチベーションであったり、継続できるようなものになると思っていますし、最終的にそういった人たちの次に発展するような場所になればと思っています。
例えば、趣味で始めたのだけど、ちゃんとした職人さんとして活躍できるようなチャンスがやってきたりとか、もしかしたら大量生産に繋がるようなマッチングができたりとか、我々としても作家さんを育てる場所を作りたいと思っています。
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一方で、買い手の方にとっては、本当に自分の欲しいもの、こだわっているもの、ずっと大切にしたいものを適正な価格で提供できるような、プラットフォームにしていきたいです。
ビジネスという側面でいうと、マーケットプレイスなので、今のECの市場からすると、全然伸びしろがあると思っています。ここは早めに広げていきたいところですね。今期でいうと、アプリのほうでは年内に500万ダウンロード。作家さんの登録数でいうと20万人くらいは増やしたいと思っています。それぐらいの規模になれば、「ハンドメイドマーケットプレイス」がなくてはならないものになるのではないかと思っています。
そうなると、「minne」の中で、ちゃんと生計立てられるだとか売れっ子作家になる、みたいなことは出来るのではないかと思います。
―― ありがとうございました。

編集後記

インタビュー中にも名前のあった、米国のハンドメイドマーケットプレイス「Etsy」は、つい先日となる2015年3月4日に上場申請したことを発表している。目論見書によると、2014年の売上高は1億9,559万ドルの規模となっているが、2012年には7,460万ドルであったことからその急成長ぶりが伺える。2014年末の時点でアプリのダウンロード数は2,180万ダウンロード、140万人のアクティブな売り手と、1,980万人のアクティブな買い手がいるとのことで、巨大なマーケットプレイスが築かれている。
物が溢れている中で、1点ものの魅力は日本でも注目が高まっていくはずだ。ポテンシャルは十分に感じられる市場なだけに、「minne」がハンドメイド市場をいかに一般に浸透させることができるかがキーになっていきそうだ。
日本にとってハンドメイドマーケットが飛躍的に伸びる1年となるのか、今後も注目していきたい。


minne(ミンネ)
https://minne.com/

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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