FEATUREINTERVIEW

【インタビュー】「Etsy」がついに日本で本格始動 ー Etsy 浅岡範子氏

世界最大のハンドメイドマーケットプレイスを展開する「Etsy(エッツィ)」。
2005年にサービスを開始してから10年が経つ同サービスは、アクティブバイヤーが2,170万人、販売中のセラーが150万店舗、販売中の商品が3,200万個という圧倒的に巨大なマーケットプレイスへと成長している。2014年度の商品総売上は19.3億ドル(約2,257億円)を記録し、2015年4月にはNASDAQに上場した。
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そんな「Etsy」だが、日本ではまだ本格展開には至っていない。2014年に日本語版のウェブサイトを立ち上げたが、1年以上も「日本語版は準備中」という位置付けで運用されてきた。
日本上陸は一体いつになるのか・・・そんな疑問が募る中、日本の出品者を対象にした無料オンライン教育プログラム「Etsyスタート2016」を1月25日から開始することがEtsy Japanによって発表された。日本に拠点があるのかさえはっきりしていなかったが、いよいよ本格始動ということなのだろうか。
今回、Etsy 日本マーケット・リードである浅岡範子氏にお話を聞くことができた。
―― 早速ですが、すでに日本に拠点を設けて活動しているのでしょうか。
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Etsy 日本マーケット・リード 浅岡範子氏

浅岡:はい、すでに日本人で構成されたチームで日本に拠点を置いて活動を開始しています。私は2015年1月に就任して、ちょうど1年になるところです。
Etsyは以前から魅力的な市場として日本に注目していました。伝統工芸もありますし、クラフトも多くの方の趣味になっているからです。
今後は日本でより多くの人に販売していただけるような活動をしていきたいと考えています。
日本のサイトも2014年に立ちあげていますが、今後より力を入れて展開していきます。1月には「Etsy JapanのFacebookページ」も立ち上げたところです。
今回大きなキャンペーンとして「Etsyスタート2016」を展開することになりましたが、ずっと準備をしてきたものです。
―― 「日本語版は準備中」という表示もつい先日消えたようだ。本格展開という段階ではないとのことだが、日本チームが本格的に始動したと言って良いだろう。
「Etsyスタート2016」は、昨年初めてオーストラリアで実施し、約3,000人が参加したオンラインプログラム「Etsy Resolution」をもとに作られたプログラムだという。非公開のFacebookグループを利用して1月25日から4週間にわたって展開する。
プログラムでは、2005年の設立以来培ってきた「Etsy」のショップオーナー向けの教育コンテンツによるトレーニングのほか、日本人トップセラーである藤井綾(Aya)さん、白髪麻衣子(Mia)さんがメンターとして参加し、参加者へのアドバイスを行う。セラー同士のコミュニケーションの場にすることも狙う。
参加無料なので、興味のある方は申し込んでみてはいかがだろうか。

それでは、引き続き「Etsy」のことを聞いていきたいと思う。
―― 作品を販売したいクリエイターにとっての「Etsy」の魅力を教えてください。
浅岡:アクティブなお客様が2,200万人以上いて、世界中ほぼすべての国で利用されている、非常にグローバルなマーケットプレイスです。
そのため、日本で素晴らしい作品を作っている方が簡単なステップで世界中に販路を広げることができます。
日本のお客様も「ここにしかないもの」「他のところでは見つけることができないような個性的な作品」に巡り合うことができると思います。
お客様からも、見ているだけでも飽きなくて楽しいとおっしゃっていただいています。
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最大の「Etsy」の特徴はコミュニティです。「Etsy」で販売する人たちがお互いにつながって情報を共有したり、お互いの店に対してアドバイスをしたり、質問に答えてもらったり、様々な活動が活発に行われています。
日本にも「Etsy Japan」というチームがありまして、「Etsyスタート2016」でもメンターとして参加いただいているAyaさんにキャプテンをしていただいているのですが、このグループは「Etsy」の中でも最も古いグループの中の一つで、600人以上の人が参加して、非常に活発にディスカッションが交わされています。
例えば、Ayaさんがメンバーの方から「売り上げが伸びなくて困っているのだけど」という問い合わせを受けて、それに対して一つ一つ丁寧にアドバイスをしていただいていて、「Etsy」で販売している方にとっては、コミュニティが本当にありがたい存在だと感じていただけているようです。
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他にも掲示板形式でやり取りができるフォーラムもあります。そこでは、アドバイスや悩み相談、ちょっとした愚痴や冗談のやり取りがされています。
モバイル(アプリ・ウェブサイト)での利用も進んでいて、訪問の割合が60%、売上の割合が44%となっています。アプリも2015年9月末時点で3,000万ダウンロードを突破しています。

ー 日本で本格展開するために足りない要素にはどんなものがあるのでしょうか
浅岡:2014年に日本語版のサイトを立ち上げましたが、まだ日本のユーザーさんにとって完全に使いやすいサイトになりきれていないという認識で、機能改善をどんどんしていかなくてはならないと考えています。
例えば、現在日本のセラーの方が受け取ることのできる決済方法がPayPalしかご用意できていませんが、Etsyが提供する決済サービス「ダイレクトチェックアウト」でクレジットカードの支払いを受け付けられるようにしたいと考えています。
サイトの日本語化も進んでいますが、ヘルプやセラーハンドブックで翻訳されていない情報もあり、日本のお客様にとって重要なところから日本語にしていく必要があります。
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また、一番大きい部分として日本でのコミュニティを作っていくことが重要だと思っています。今回の「Etsyスタート2016」をきっかけにして、日本でのセラーさんのコミュニティ作りをお手伝いしていきたいと思います。
―― 日本ではハンドメイド作品を趣味で売っている方が多いように感じているのですが、「Etsy」ではビジネスとしての意識が強いのでしょうか
浅岡:「Etsy」でも趣味でやっている方は、もちろんたくさんいらっしゃいますし、そこが一つの入り口だと思っています。
ただ、「Etsy」としてはクリエイティブなビジネスと捉えているので、「そのビジネスでどうやって成功していただくか」というところでサポートをさせていただいています。
「これから売上を伸ばしていきたい」「いまは傍らでやっているけど、仕事を辞めてEtsyに専念したい」って人にも満足いただけるような情報や機能を提供していきたいと考えています。
その一つとして、誰でも閲覧できる「セラーハンドブック」を提供しているのですが、写真撮影のコツやSEOに関する知識など、ショップの運営に関する知識を身につけていただくことができます。
ショップオーナー同士でアドバイスし合うなど、コミュニティでの意見交換も活発に行われています。
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手数料も商品が売れた際に3.5%、商品を出品する際に20セントというお手頃な手数料となっているのですが、セラーさんがお金をビジネスを大きくするために使えるように考慮しています。
―― 日本では5ドルでしか売れなかったものが「Etsy」では25ドルで売れたというお話を聞きました。
値段のつけ方に関して何か配慮していることはあるのでしょうか。

浅岡:「Etsy」としては商品の値段をつける際に、自分たちが納得出来る価格をつけることをアドバイスしています。
材料費だけでなく、自分が費やした時間、梱包の費用、マーケティングの費用、そういったものを全部加味して、自分が自分にお給料をあげる時に十分な稼ぎが出せるような価格付けをお勧めしています。
クリエイティブな方の中にはビジネスとして考えたことのないという人もいますので、「Etsyスタート2016」やセラーハンドブックで値段のつけ方や会計など、ショップ経営のノウハウも提供しています。
―― 日本人の作品はどんなものが売れるのかといった傾向はありますか
浅岡:「Etsy」は、ハンドメイドとビンテージ、クラフト資材という3つの大きなカテゴリがありますが、全体の傾向では、アクセサリー・雑貨・アパレルの人気が高いです。
日本で販売されている方の意見聞くと、「日本らしいテーマを持った作品」ですとか、「かわいい」ものが売れるとのことです。
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クラフト資材でいうと、日本の布の人気が高いので、日本のプリント生地を販売している方もいらっしゃいますし、ビンテージでいうと、日本の骨董品を販売している方もいらっしゃいます。日本の文房具もすごく人気があります。
日本の方に限らず、「ここにしかない1点もの」を探している方が多いのですが、日本のセラーさんは欧米に比べてまだ少ないにも関わらず、日本のデザインや品質に魅力を感じている人は多く、とても期待されています。
―― 「Etsy」ではハンドメイド作家がビジネスを拡大したい時にそれを支援する動きがここ最近で見られている。例えば、2015年9月に開始した「Etsy Manufacturing」という、ハンドメイド作家と製造業者を結ぶサービスを開始している。
最後にその考え方について聞いた。
浅岡:「Etsy」の大事な価値観として、持続可能な社会というか、責任感のある社会というものがあります。
大量生産大量消費じゃなくて、一つ一つ責任のある方法で作られた商品が、たくさんの人に買っていただけるような社会を作っていきたいと思っていまして、そういったものを私たちは「Etsy Economy」と呼んでいます。
責任感のある消費者、社会的な影響を考えた良心的な購買行動がもっと広がってほしい、そういった人たちに向けて商品を作る方を応援したい。そういう意味で、作り手が「注文が増えてきたからもう少し生産を増やしたい」というときに、単なる大量生産ではなく、責任を持った方法で生産規模を拡大するお手伝いをしたいと考えています。
海外の工場に大量発注するのではなくて、地元の方の雇用を重視したり、環境排出のことまで考えた顔の見える委託生産者と作り手の方がパートナーを組むことをサポートすることができないかということで始まったものです。また、委託生産に関する承認プロセスを作り、透明性を確保できるようにしました。
あくまで自分で作ることが原点ですが、例えばハンドメイドで作品を作っていた方がその作品の写真をプリントして販売したい、でも自分自身は印刷のノウハウを持っていないという場合に、Etsyの基準を満たした印刷工場を紹介、マッチングするという事例もあります。
―― ありがとうございました。

編集後記

今回はじめて「Etsy」の方にお話を聞くことができたが、コミュニティの形成や啓蒙活動をかなり重視していることは、これまでに見えていなかった部分でとても印象的だった。
国内のサービスでは、ここまでコミュニティの形成を重視している例は見当たらない。
教育とコミュニティ、この仕組みがうまく回っていることで、多くの魅力的な商品が並ぶマーケットが形成されているのだろう。
その核となる部分を広めるための今回の動き。国内では初めての大きな取り組みとなるので、今年は日本での露出も大きく増えるかもしれない。今後の展開も楽しみだ。
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Etsy 日本マーケット・リード 浅岡範子氏

Etsy(エッツィ)
https://www.etsy.com/jp/
Etsyスタート2016
https://www.etsy.com/jp/resolution

イイヅカ アキラ
Shopping Tribe編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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