COLUMN

キーワードは “モビリティ”と “エクスペリエンス” —これからのリアル店舗に求められるものとは

ポップアップストアや展示会などを開催するスペースを貸し借りできるオンラインマーケットプレイス「SHOPCOUNTER(ショップカウンター)」を運営するCOUNTERWORKSの最所さんにリアル店舗の新しいあり方について解説頂きました。

今年に入ってブランドの撤退や店舗閉鎖のニュースが相次いでいますが、今後も当面この流れは続いていくと考えられます。
少子化や都心への一極集中によって郊外店舗を中心に店頭での販売額は減少していくにも関わらず、賃料や人件費などの固定費は変わらないため、店舗単体で採算がとれなくなっていくからです。
しかしその一方では、リアル店舗での顧客接点があることでエンゲージメントが高まり、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)がより大きくなるとも言われています。
mobility1
そこで今回は“モビリティ(流動性)”と “エクスペリエンス(体験)”の2つをキーワードにして、これからの時代に求められるリアル店舗のあり方について考察します。

店舗はお客様を待つ場所ではなく “お客様に会いに行く場所”へ

まずこれからの小売に求められる視点として“モビリティ”があります。
刻々と変化するエリア特性や消費者ニーズに対応する機動力の高さです。
一般的に常設店舗を開く際には2〜3年の契約となりますが、ここ数年で人気に火がついた東京の清澄白河や蔵前エリアのように、短期間でお客様の流れが変わってしまうことも少なくありません。
長期の賃貸契約は、出店してから数年でそのエリアに集まるお客様の趣味嗜好が変わってしまうリスクもはらんでいるのです。
そこで最近はポップアップストアをはじめとする機動力の高い出店方法が人気を集めています。
特にこれから注目したいのは小型のトラックの中に商品を並べて販売するファッショントラック。
キッチンカーのように、お昼休みの時間にあわせて路上に現れて、OL向けのファッションアイテムや雑貨を販売するファッショントラックは、すでにアメリカでは定着しつつある存在です。
これなら平日のショッピングが難しいフルタイムで働く女性でも、気軽に立ち寄ることができ、効率的にターゲット層にアプローチできます。
日本でも「SUPERTHANKS BOX」というトラックを活用した移動型店舗がオープンし、今後の展開に期待が高まります。(より詳しいレポート
superthanksbox

▲SUPERTHANKS BOX出店の様子。トラック内のミシンを使ってその場でワッペンを縫い付けるパフォーマンスが人気。

「SUPERTHANKS」は現在ECのみで常設店舗はもっていませんが、すでに常設店舗があるブランドも機動力を高めていく必要があります。
「ブルーボトルコーヒー」はまさに機動力の高い出店を実現しているブランドのひとつで、常設店舗とは別に自由が丘や銀座など常設店舗ではアプローチできていないエリアへの期間限定出店を積極的に行っています。(より詳しいレポート
常設店舗でカバーできないエリアへ短期間出店することで、興味はあっても来店まで至っていなかったライト層にブランド体験の機会を提供しブランドへのエンゲージメントを高めるきっかけを作ることができます。
店舗でお客様の来店を待つのではなく、自らお客様のいる街へ出て行く姿勢が、これからの出店戦略に求められる考え方と言えそうです。

ショップは販売の場から “ブランド体験の場”へと役割が変化

しかし、ただ機動力が高いだけではお客様にブランドや商品のよさを伝えることはできません。
そこで注目したいのが二つ目のキーワードである “エクスペリエンス”。
ポップアップストアも、商品を販売するだけではなくブランドについて知り、ファンになってもらう場としての活用が増えてきています。
例えば先ほどご紹介した「SUPERTHANKS BOX」では豊富な種類の中からお客様が選んだワッペンをトラック内のミシンで縫い付けてお渡しするというサービスが人気を博しています。
「ブルーボトルコーヒー」もこだわりのコーヒーを口にしていただくだけではなく、世界観の近いショップとのコラボによって居心地のよさを含めたトータルの顧客体験を重視しています。銀座で展開したポップストアはセレクトショップ「EN ROUTE(アンルート)」店内に約1ヶ月間出店しました。
bluebottle

▲銀座・EN ROUTEで開催されたブルーボトルコーヒー ポップアップショップの様子

両者ともに短期出店にも関わらずリピーターのお客様がつくなどよい反応が得られたと言います。
さらにEC発のブランドはその場ではなくEC上でも購入できるため、海外ではあえてその場での販売しないショールーム型のポップアップストアを開くなど “体験してもらうこと” に振り切った事例も。
これからはブランド自らお客様へ会いに行き、そこで出会ったお客様にブランドや商品への愛着をもってもらえるような体験を用意するといったコミュニケーションの創出がリアル店舗の存在価値となっていきそうです。

You may also like

Comments are closed.