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アメリカではすでに巨大な市場に — 日本でも注目が高まる「ポップアップストア」とは

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編集長のイイヅカです。最近ではポップストアオープンのニュースを頻繁に見かけるようになりました。ECサイトのみで展開していたブランドなどが、認知拡大やリアルな接点を設ける為に期間限定ストアを続々とオープンしています。
今回はポップアップストアや展示会などを開催するスペースを貸し借りできるオンラインマーケットプレイス「SHOPCOUNTER(ショップカウンター)」を運営するCOUNTERWORKSの最所さんにポップアップストアについて解説していただきました。

みなさん「ポップアップストア」という言葉はご存知でしょうか。ニュースで取り上げられることが多くなってきたので、「聞いたことがある」という方も結構多いかもしれません。
「ポップアップストア」は、ブランドやECサイトを運営する事業者などが、空きスペースなどに期間限定で出店する仮店舗のことです。「ポップアップショップ」や「ポップアップリテール」とも呼ばれます。
突然出店し突然消えてしまうことからポップアップと表現されています。
百貨店や商業施設を中心に期間限定で出店する手法は古くからとられてきましたが、ここ数年ポップアップストアという呼び方で改めて盛り上がりを見せています。
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アメリカでポップストア用スペースのマーケットプレイスを運営する「Storefront(ストアフロント)」が公開したデータによると、その市場規模は年間800億ドル(約9.3兆円)にのぼると言います。
また、Britain’s Pop Up Retail Economyが発表したデータ(PDF)によれば、イギリスでは2014年に10,000以上のポップアップストアがオープンし、市場規模は23億ポンド(約3,500億円)にのぼったとのことです。
今回はその盛り上がりの背景やポップアップストアのトレンドをご紹介します。

年々高まる出店のハードル

ポップアップストアの盛り上がりの背景にはまず小売業界の変化があります。
小売業界では、数年後に国内で20兆円に達するともいわれるEC市場が年々成長し、オンラインのみで販売を行うブランドが増えてきました。
EC市場が成熟していったことで「実物を見てみたい」「触って確かめてみたい」といった顧客ニーズが生まれ、実店舗を持ちたいというニーズが高まってきています。
しかし、実店舗を出すためには敷金・礼金や補償金など多額の初期費用がかかるのが一般的。
加えて2年や5年などの長期契約が基本となっているため、体力のある大企業でなければ実店舗をもつのは難しく、出店したくてもできないブランドが数多く発生しているのが現状です。
さらに都市部への人口一極集中が進んでいることで商業用不動産の価格も跳ね上がり、2015年は東京都23区すべての地価が上昇するなどますます出店へのハードルが上がっています。(参考:土地代データ

欧米のポップアップストア事情

こういった都心部一極集中による地価の上昇はニューヨークやロンドン、パリなどの大都市でも同様に発生しており、少ない初期投資で出店する方法としてポップアップストアの人気が高まっています。
そんなポップアップストア文化を支えているのが出店用スペースのマーケットプレイス。
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イギリスの「Appear Here(アピアヒア)」、アメリカの「Storefront(ストアフロント)」、フランスの「Popup Immo(ポップアップイモ)」など、各国のマーケットプレイスを通して小さなブランドの展示会から大企業のプロモーションまで大小様々なポップアップストアが出店されています。
私たちも日本で東京を中心に「SHOPCOUNTER」という同様のサービスを提供しており、レンタルスペースや貸しギャラリーを中心に、店舗の一角など気軽に出店できる場所を紹介しています。
最短1日から数千円でポップアップストア用のスペースをレンタル可能で、表参道の人通りが多い一等地に1日だけお店を出すなんてことも可能です。

今後の日本におけるポップアップストア展望

ポップアップストアを出す理由は販売だけではなく、ブランディングや認知度の向上など様々な目的があります。
「SHOPCOUNTER」を利用して出店したいくつかのポップアップストアをご紹介します。
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オンライン上で生活者と共にユニークな新商品をつくるプラットフォーム「Wemake」は、サービス上で開発された新商品 「Dplus」のポップストアを実施。
商品化を進める上で「生のお客様の声」を集めることを目的として出店されました。
表参道にあるイベントスペースで商品を紹介し、ターゲットに近いお客様から有益なフィードバックが得られたと言います。
普段はオンライン上で商品開発を進めていますが、ちょっとした表情の変化や声のトーンで細かいニュアンスを感じられるリアル店舗での経験は商品の改良に大きく寄与したようです。(より詳しいレポート
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▲12月に出店された「Wemake」ポップアップショップの様子。

最近では海外ブランドや地方を中心に展開しているブランドが東京での認知度を高めたいという理由でポップアップストアを開く事例も増えています。
オランダ発のレディースウォッチブランド「CLUSE」では若い女性の認知度を高めるための施策として、美容室の一角を利用してポップアップストアを出店しました。
委託販売可能なスペースを借りたことで富山県にある「CLUSE」の運営会社から販売人員を割く必要がなく、低コストで効果的な出店を実現しました。(より詳しいレポート
認知度が低く集客に不安があるブランドでも、美容院やカフェの一角であれば1日数千円という低コストで出店することができるため、立ち上げたばかりのブランドや1人で運営しているブランドに人気の出店方法です。
今後はこういった利用以外にもECのみで展開しているアパレルブランドがフィッティング会やスタイリングサービスのために利用したり、サービスを開発している企業がユーザーテストやブランディングの場として利用したりすることも考えられます。
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▲美容室の一角で展開されたCRUSE ポップアップショップ。

モノからコトへ消費の関心が移っていく中で、今後“体験する場”としての実店舗の需要はますます高まっていくことが予想されます。
さらにポップアップストアの台頭により、既存の店舗では実施が難しいチャレンジングな取り組みがしやすくなるのもポイント。
欧米ではすでに販売だけではなく、来店客に驚きや感動を与えて口コミを広めるポップアップストアの事例も増えてきています。
すでにポップアップストアが日常にとけこんでいる欧米のように、日本でもポップアップストアが大きなムーブメントとなる日も近いのではないでしょうか。

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