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【連載】2014年のEC展望(4):ビデオコマースが普及の兆しを見せるか

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2014年はEC業界でどのような動きが活発になるかを探る「2014年のEC展望」の第4回。今回はビデオコマースを取りあげる。

動画で商品の魅力を訴求し購買を促すビデオコマース。米国では様々な成功事例があるが、日本ではまだまだ動画を活用したECサイトは少ない。しかし、2014年はビデオコマースが普及の兆しを見せる1年となるかもしれない。
昨年末となる2013年11月29日に楽天は動画を活用したECサイト「VAULT(ヴォルト)」を公開した。2012年に米国でスタートしたビデオコマースサイトの日本版で、動画を通して商品の世界観やストーリー、さらに品質の高さを表現し、ユーザーの感性を刺激することをコンセプトにしている。本格的なビデオコマースは日本で初めての登場となる。
動画で撮影した商品レビューをYouTubeに公開しているYouTuber(ユーチューバー)にも注目が集まりつつある。昨年の11月にYouTuber専門のタレントプロダクション「uuum(ウーム)」が設立され、企業とのタイアップ企画の窓口となる事務所が設立された。
同時に、所属するYouTuberの商品レビュー動画を集めた「世界で一番伝わるショッピングサイト ONSALE TV」も開設している。
いずれもスタートラインに立ったところではあるが、動画に注目が集まりつつあるのは間違いないだろう。

動画が活用されないのはなぜか?

動画コンテンツはYouTubeを利用すれば無料で配信可能で、撮影も極めて低コストで行えるようになった。視聴者の環境も動画を視聴するのに問題のない水準に十分高まっており、ビデオを活用するのに申し分のない環境になっていると言えるだろう。しかし、これは数年前から言えたことではある。
環境が整っているにも関わらず、動画が活用されないのはなぜなのだろうか。動画が伝えられる情報量はかなりのものがあると思うのだが、あまり評価されていないのだろうか。
私が最近経験したことを元に考えてみよう。先日、15インチのノートパソコンやタブレット端末を入れて背負えるタイプのカバンを探していた。調べているうちに「Thule Crossover 32L バックパック」という商品が要件を満たしてくれそうなことがわかり、いろいろショップでこの商品を検索してみた。
ところが、いくつかのサイトを見ても、以下のような前後を写した写真が掲載されているばかりで、バッグの中味がどうなっているのかが把握できなかった。
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近所で展示しているショップがあるか探してみたが、どうやらそれもない様子。これでは情報量が少なくて購入の判断もできない。そこでYouTubeで該当の商品を検索してみることにした。
そうすると、すぐにバッグの特徴を知るには十分過ぎるほどの動画を見つけることができた。
その動画がこれだ。

この動画を見たところ、バックにどのぐらいの荷物が入るのか、使い勝手はどんな感じなのかがすぐに理解ができ、このバックの良さを確認することができた。たった2分の動画である。写真を多様すればある程度はカバーできると思うが、やはり動画の情報量は圧倒的に思えた。
動画によって、写真や文章では伝わらない特徴をユーザーに伝えることができ、迷っているユーザーや、何かしら不安に思っているユーザーの大きな後押しになるのではないだろうか。
日本ではまだ活用しているサイトが少ないだけに、差別化の一つになるはずだ。

海外の事例

では、ビデオコマースが進んでいると言われる米国ではどのような事例があるのだろうかいくつか紹介しておこう。

Zappos

http://www.zappos.com/
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日本でも知名度のあるザッポスもビデオを早くから活用して成功を収めた企業だ。自社にビデオ制作チームを抱え、社員自らが商品紹介をしている。
主要商品である靴に関しては、ほとんどの商品に動画が用意されており、動画を公開しているYouTubeチャンネル「ZapposGear」を確認すると、動画数は20万本を超えている。動画を60秒以内に収めるルールを設けており、商品の説明や実際に履いた様子などを短い時間に収めている。パターン化して効率化を図っているのも特徴だ。

joyus

https://www.joyus.com/
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ビデオを商品紹介のメインに据えるのはビデオコマースのスタートアップ「joyus」だ。
商品ページを開くと、メインで表示されるのが動画で、少し見ただけでも動画のクオリティの高さに驚く。スタジオだけでなく、外で撮影されたものなど、かなり多くのカットを用いて動画が作成されている。
商品の紹介から、実際に使った様子などを2分〜3分程度に収めており、動画内のリンクでポイントとなるシーンに飛ぶ事ができるのも動画を見やすくしているポイントの一つだ。クオリティで勝負した事例と言えるだろう。

shopflick

http://www.shopflick.com/
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インディーズ系ブランドの商品を販売する「shopflick」は、デザイナー自らが商品を紹介している他、デザイナーのインタビュー動画を用意するなど、ブランドをより深く知ることができるコンテンツとして動画を活用しているのが特徴だ。
独自色を出したことで成功した事例と言えるだろう。
2014年はビデオコマースが一気に普及する。と断言したいところだが、まだその兆しが見えそうになっている程度の印象だ。何かがきっかけになれば一気に注目が高まるかもしれないし、joyusのような強烈なスタートアップがビデオコマースを牽引することもありえるだろう。今年はどのような事例が生まれるか注目したい。

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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