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【連載】2014年のEC展望(1):本格化するオムニチャネル戦略

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2013年はEC業界にとって様々な変化があった1年だった。2014年はEC業界でどのような動きが活発になるだろうか。2014年のEC業界展望を連載で紹介していく。

2014年もっとも重要なトピックとなりそうなのが「オムニチャネル」だ。オムニチャネルとはリアルとネットのあらゆる顧客接点をシームレスにつなげ融合することを意味する。
これまではO2Oというキーワードが目立っており、ネットから店舗への送客、もしくは店舗からネットへの送客という一方通行で考えられることが多く、リアル店舗とネットを別次元として捉えられることが多かった。
しかし、ここ最近の流れでは、リアル店舗とネットショップのそれぞれの良さを活かし、垣根を無くした考え方が台頭している。2014年はこの動きがさらに活発になることが予想される。
オムニチャネルの象徴的な動きをいくつかご紹介しよう。

オムニチャネル化を最重要課題に掲げるセブン&アイ

オムニチャネル戦略を大々的に打ち出しているのはセブン&アイ・ホールディングスだ。2013年末の買収・出資攻勢が話題になったが、セブン&アイはオムニチャネル化の推進を経営の最重要課題と位置付けており、今後5年間で1000億円を投じてオムニチャネル化を進める考えを示している。
セブン&アイが進めるオムニチャネルは「あらゆる業態の商品」を「あらゆるチャネル」で購入できるサービスの提供を目指しており、全国で約1万6千店舗を展開する「セブン・イレブン」という強烈なチャネルを最大限に活用していく。
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イオンがオムニチャネルを推進する旗艦店をオープン

イオンは2013年12月20日、オムニチャネル化を推進する旗艦店「イオンモール幕張新都心」をオープンした。
商品などの「モノ」、体験や体感などの「コト」に加えて「ネット(デジタル)」を融合させたオムニチャネルによって新しいショッピング体験を提供することを狙う。
イオンモール幕張新都心では店内に設置されているタブレット端末で注文ができる「タッチ・ゲット」というサービスをイオンで初めて導入した。このサービスは、タブレット端末で商品を検索して情報を見て注文することができる。在庫があればその場で受け取りが可能で、在庫がなくても自宅まで配送してもらうことができる。スペースの限りがある店舗の機能をネットで補うものだ。
この他にもスマートフォンをかざすことで商品の詳しい情報を確認することができる。「撮って!インフォ」というスマートフォンアプリも提供する。
店舗で体験させ、在庫や情報をネットで補うサービスだ。
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最小の人員で店舗を24時間化

ヨドバシカメラはネットで注文し、店頭で24時間受け取りが可能なサービスを1月から大阪で、3月に東京で開始する。ネットで商品選び・在庫確認・注文を行い、店舗で受け取ることができるサービスだ。
深夜に急ぎで必要になった商品や、仕事帰りに商品を受け取って帰りたいといったニーズに応える。
店舗全体を24時間営業するとなると、多くの人員が必要になるが、商品選びから注文までをネットの役割にすることで、店舗側は注文のあった商品をピックアップし、受付で商品を受け渡すだけで良いため、最小の人員で24時間営業を行うことができるようになる。
ネットをショールームとして扱い、受け渡しのみを店舗で行うという、逆転の発想とも言える動きだ。
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ネットで選び店舗で試着

洋服の青山は、ネットで商品を選び、最寄りの店舗で試着予約できる「試着予約サービス」を展開している。あらかじめネットで商品を選んで試着予約を行い、最寄りの店舗に届けられた商品を試着することができるサービスだ。商品が気に入らなかった場合は購入しなくても良い。
利用者にとってはネットでゆっくり商品を選ぶことが可能で、店舗で在庫がなかったといったことも避けられる。ネットだけで決めるのは不安といった利用者の要望に応えるもので、時短にもつながるものとなっている。
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試着専門店の動き

米国でメンズアパレルを展開するBONOBOS(ボノボス)は試着専門店「BONOBOS GUIDESHOP(ボノボス ガイドショップ)」を展開している。
ガイドショップで展示されている商品はすべて試着用で、店舗での販売を行わないのが特徴だ。試着に特化することで、あらゆる商品のあらゆるサイズを試着することが可能になり、店頭に訪れても目的の商品やサイズがなくて試着できないといった問題を解消する。
気に入った商品があった場合は、オンラインストアで購入する。スタッフがその場で注文手続きを行ったり、自宅に帰ってから注文することも可能だ。商品は翌日に到着するので、あまり待たされることもない。
事前に予約をすることで、スタイリストのアドバイスを受けながら商品を見ることもできる。

日本でもこの動きが今年から始まる。アースミュージック&エコロジーなどを展開するクロスカンパニーは2014年に試着専用の店舗を東京にオープンする予定だ。店舗で服を確認し、注文はスマートフォンなどを使って行う。
この動きは、リアル店舗とネットをうまく役割分担した事例といえるだろう。店舗としても大量の在庫を抱える必要がなくなるため、省スペースで店舗を展開できるというメリットもあるという。日本でもこの動きが活発化しそうだ。


店舗とネット、それぞれの強みを最大限に活かしながら利用者の利便性と選択肢を広げる動き、2014年はどのような動きが見られるのか、Shopping Tribeでも重要なトピックとして取り上げていく。

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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