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2014年、EC業界で話題になった10大ニュース

すでに2015年に突入して1カ月が経とうとする中で、すっかりタイミングが遅くなってしまったが、Shopping Tribeで取り上げた2014年のニュースの中で、EC業界の潮流を表す注目のニュースをまとめておきたいと思う。
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2013年はスマートフォンの利用者が急激に拡大し、生活行動が変化していく中で、ネットとリアルの相互に送客するO2Oというキーワードがさらに推し進められ、オムニチャネルというリアルとネットのあらゆる顧客接点をシームレスにつなげ融合する考え方が登場した。
2014年はその流れを推進しつつ、新たな購買体験を生み出すサービスの登場が目立った。2015年はどのような動きが見られるのか、まずは2014年を振り返ることでそのヒントを探っていこう。

1. Yahoo!ショッピングの出店数が約10倍に

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2013年10月に「eコマース革命」を発表し、手数料・月額利用料・売上ロイヤルティを無料にしたYahoo!ショッピングは、店舗数が一気に拡大した1年となった。2013年9月末時点では2万店舗ほどだった店舗数が、2014年9月末には19万3千店舗まで増加。商品数も「eコマース革命」前より約5割の増加となる1.2億点とし、業界トップの楽天市場の商品数1.5億点に一気に迫る形となった。
なお、出店の敷居を下げるために、5分ほどで簡単にショップを作れる「ストアクリエイター」を1月22日から導入し、2月からは個人の出店受付も開始している。
第2四半期(7月〜9月分)のショッピング関連の流通総額の伸びは前年同期比で10%増にとどまったが、2015年は成果が生まれる1年になってもおかしくはない。


2.スマホシフトが本格化

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2014年はECサイトにおいてスマートフォンでの利用の割合が5割を超えるという事例を度々聞くことになった。ニールセンが2014年3月に発表した「PCからスマホへのシフト状況」という調査では、楽天とAmazonのそれぞれでスマホからのアクセスがパソコンからのアクセスを2014年1月に逆転している状況が明らかになった。
楽天が2014年11月に発表した数字では、楽天市場の流通総額ベースでモバイルからの購入の割合が43%となっており、スマホでの購入の割合は女性が7割に及ぶことも明らかにされている。スタートトゥデイが2014年1月にデバイス別出荷比率でスマホが5割を超えたことも話題になった。
スマホシフトは、20代〜30代の女性を中心に進んでいるが、2014年はスマホの保有率が40代、50代で急速に進んでいることもニールセンの調査で明らかになっている。2015年もさらなるスマホシフトが進むことになるだろう。


3. フリマアプリが跳躍

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2014年はフリマアプリが一気に利用者を獲得した1年となった。市場を牽引したのは「メルカリ」で、5月にテレビCMを開始してから、半年で約400万ダウンロードを伸ばし、12月時点で700万ダウンロードを突破した。月間流通総額は数十億円規模となり、フリマアプリの中では頭ひとつ抜けた存在となっている。女性に特化した「Fril」も250万ダウンロードを突破し、月間流通総額は5億円を超える。
他にもLINEの「LINE MALL」や楽天の「ラクマ」など、大型のプレイヤーが参加し、市場をさらに盛り上げている。2015年もこの勢いは止まらないだろう。


4. インスタントコマースが10万店舗を突破

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数分でネットショップを無料で開設できるインスタントコマースを展開する「STORES.jp」と「BASE」がそれぞれ店舗数を大幅に伸ばした。「STORES.jp」は2013年12月時点で6万店舗だったが、2014年11月には17万店舗に拡大。「BASE」は2013年10月時点で5万店舗だったが、2014年11月には10万店舗にまで拡大させた。
インスタントコマースは、BtoCというよりもCtoCという側面が強い。これまでネットショップを開始するとなると、かなりハードルが高いものである印象が強かったと思うが、このハードルを極限まで下げ、気軽に自分のショップで物を売ることを可能にしている。
フリマアプリとネットショップの中間に位置するような存在で、新たな需要を生み出したと考えれば、まだ店舗数は伸びると考えて良いだろう。


5. 楽天がリアルへのアプローチを強化

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楽天は、「楽天経済圏」をリアルに拡張するような動きが目立った。店舗でチェックインするだけでポイントが貯まる「楽天チェック」を4月に開始し、楽天市場で人気のお取寄せスイーツなどを提供するリアル店舗「楽天カフェ」を5月に東京・渋谷にオープン。そして、コンビニなどの全国約1万2,600以上の加盟店舗で楽天ポイントの貯蓄・利用ができる「Rポイントカード」の発行を10月に開始している。
特に「Rポイントカード」に関しては、先行するTポイントやPontaを2015年にどれだけ追い上げることができるかがポイントとなりそうだ。


6.パルコ、全テナントのEC化の取り組みを開始

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パルコが全テナントをEC化する取り組みを始めた。新サービスの名称は「カエルパルコ」だ。新しい取り組みとして当メディアとしても注目しているサービスだ。
「カエルパルコ」は、全国のパルコに出店する約3,000テナントショップによって運用されている「パルコショップブログ」で紹介する商品を、記事からそのまま購入したり、取り置き予約したりすることができるサービスだ。
取り置きの場合は、店舗に訪問する必要があるが、購入は全国から行うことができる。
この仕組みの面白いところは、注文された商品はショップの店頭在庫より発送され、売上は同ショップに計上される点だ。そのため、ショップがブログを通じて集客し、売上に直結させることができる。注文機能は「STORES.jp」との連携により実現している。
リアルとネットが融合するという文脈において、非常に興味深い動きで、パルコが開始した意義は大きい。


7.速配のスタートアップが登場、米国ではAmazonが開始

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1時間以内に注文したサービスを届ける速配サービスを展開するスタートアップも話題を集めた。「bento.jp」は、スマホで注文するとお弁当を20分で配達するサービスを開始、「dely」は出前を行っていないようなレストランなどの料理を注文から30分で届けるサービスを開始した。
いずれもスタートアップが展開しており、スマートフォンで簡単に注文できるのが特徴だ。
日本ではランチがメインだが、米国ではAmazonが2014年12月にニューヨークで1時間以内に配送するサービス「Amazon Prime Now」を開始した。2015年は他のエリアで展開する計画もあり、日本に上陸することもありえるだろう。
いずれも自転車が主な運搬手段となり、エリアは限られているため広範囲な展開は難しいものの、都心のサービスとしては一般化していくことが考えれる。


8.コーディネートアプリ「WEAR」や人工知能アプリ「SENSY]が話題に

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スタートトゥデイのファッションコーディネートアプリ「WEAR」の好調さが話題になった。アプリのダウンロード数は400万(日本で350万、海外で50万)を超え、アメリカやイギリスなど24ヵ国に展開した。
また、ファッションセンスを学習し好みのアイテムを提案してくれるアプリ「SENSY」も話題になった。
「SENSY」は、次々と表示されるファッションアイテムに対して、「LIKE(好き)」か「DISLIKE(嫌い)」かを選択していくだけで、人工知能がその人のファッションセンスを学習し、自分の好みにあったアイテムを提案してくれるというものだ。
これらのアプリの共通点を見ると、自分が何を買えば良いかを発見することに役立つという点になるだろう。「2015年は買いたいものを見つける」ことに特化したサービスがさらに登場するのではないだろうか。


9.第1類医薬品のネット販売が解禁

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大衆薬や市販薬と呼ばれる一般医薬品の販売ルールなどを定めた改正薬事法が6月12日に施行された。この改正により、第1類医薬品と第2類医薬品のネット販売が正式に解禁となり、一般医薬品の99%がインターネットで購入できるようになった。
第1類医薬品に分類される代表的な医薬品にはロキソニン、ガスター10、リアップ、フレディCCなどがある。第1類医薬品は、副作用リスクが高いとされているもので、販売する際には薬剤師が医薬品に関する情報提供をすることを義務つけられているが、これはネットでも同様で、体制やサービスの整備が必要になるため、どの店舗でも販売できるわけではない。購入する際にも薬剤師のチェックが必要なため時間がかかるなど、利用者にとっては不便な面もある。
2015年はこの辺りをクリアした薬の速配サービスなども開始されるかもしれない。


10.ユニクロの「UTme!」が話題に

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ユニクロが2014年5月にサービスを開始したオリジナルTシャツをスマホで作成できるサービス「UTme!」が大きな話題となった。当メディアで紹介した際にも4,000シェアを超えるほどの反響だった。
これまでも、Tシャツの作成サービスはあったが、データによる入稿が必要だったり、時間がかかってしまうことが一般的だった。
「UTme!」は、スマートフォンで簡単にオリジナルのデザインを作成できるだけでなく、最短翌日発送というスピード感や1,990円という価格設定が相まって大きな話題を読んだものと思われる。
2015年は、引き続き様々なカスタマイズECが登場することになるだろう。


この他にも、Amazonが「ネット完結型の中古車販売」を開始したことや、後払い決済が浸透し「ヤマト運輸」や「佐川急便」が参入したことも注目すべきニュースだろう。
そして、「ネットで注文して店舗で受取るサービス」や、「試着予約をネットで行える」サービスも多く登場した。2015年もこの辺りの動きは活性化していくことだろう。
2015年の展望はまた次の機会で紹介したいと思う。

イイヅカ アキラ
ST編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。

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