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何のために並ぶの?カナダのローカル店で広がるテイクアウト注文アプリ「Ritual」

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トロント中心部の商業エリアは徒歩で20分もあれば横断できてしまう。
そのような狭いエリアの中に、オフィスビルとレストランが密集しているため、昼の時間帯はレストランに長い列ができる。筆者の場合、ランチの度に長い列に並ぶのが嫌で、昼はコンビニの安いサンドウィッチで済ますことがほとんどになってしまった。
だが、2014年にトロントで始まったアプリ「Ritual(リチュアル)」を使えば、長い列にならぶイライラから解放される。

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「Ritual」はレストランやカフェのテイクアウトをスマホから事前注文できるアプリだ。このアプリを使えば、ユーザーは事前にアプリ内でランチを注文することができ、注文したレストランで待たずに受け取ることができる。注文のために長い列にならぶ必要もなければ、チップのために小銭を用意する必要もない。


スマホから事前注文して待たずに受け取る

利用は簡単だ。まずは電話番号、クレジットカード番号などの情報を入力し、ユーザー登録をする。そして、アプリを起動すれば、ユーザーの現在位置を特定し、近くのお店を表示してくれる。表示されるレストランは人気度によって並べられているので、数多くあるお店の、どのランチを選ぶかに悩むこともない。また、過去に注文した履歴がアプリ内に残っているため、自分のお気に入りのメニューを素早く注文することもできる。

注文が終わったら、あとはアプリが指定した時間にそのお店に行き、あらかじめ用意されたランチを受け取るだけだ。支払いはアプリ内で完結するので、ランチの受け取りに財布を持っていく必要すらない。
しかも、「Ritual」で注文したランチは、受け取った時に冷めてしまっているという心配もない。注文したユーザーの位置情報は、アプリを通してレストラン側にも発信される。このため、レストランは、利用者がお店まで丁度いい距離まで近づいたときに調理を始めることができる。だから、事前に注文したランチでも、毎回できたての状態で提供されるというわけだ。

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ランチで待たされる時間は無駄でしかない

「Ritual」を創業したのはレイ・レディーという男。彼は2008年に「Pushlife(プッシュライフ)」という音楽再生アプリを立ち上げ、その3年後の2011年にはGoogleにその事業を売却したという経歴を持つ。
彼にとって、ランチの注文のために列に並んで待つという行為は、無駄な時間でしかなかった。
「もし注文のために5分かかるとしたら、僕はその時間を、散歩のために使うか、公園にゆっくりと座るために使いたいです。正直、5分早くオフィスに帰るほうがましですね。」と彼はトロントの情報誌「Metro(メトロ)」で語った。そんな彼のイライラが「Ritual」の創業のアイデアとなった。

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「限られたランチ休憩の時間を、より効率的にしてくれる」。こうしてトロントのオフィスワーカーを中心に受け入れられ、「Ritual」は急成長中だ。昨年の秋に人気が急上昇するにつれて、2014年の設立当初は80店ほどだった提携レストランの数は、その後400店まで膨れ上がった。そのほとんどがトロント市内の小規模レストランやカフェで構成されている。レイ・レディーによると、提携する小規模レストランの中には、「Ritual」と提携することによって売り上げを1,000万円近く伸ばしたというケースもあるそうだ。


ローカル店が客を呼ぶ手段の1つに

小規模レストランとの提携数が膨れ上がったのには理由がある。彼らにとって「Ritual」は、スターバックスなどの大規模チェーンと競合するための有効な武器となっているからだ。比較的規模の小さなレストランは、自社アプリを作るリソースはない。また、たとえ自社アプリを作ったとしても、現在のように数多くのアプリが世の中に存在する状況では、それが使われる可能性は低いかもしれない。
提携レストランの一つ、「Big Smoke Burger(ビック・スモーク・バーガー)」のオーナーであるムスタファ・ユスは「Ritualを利用することで、自社アプリを作るコストを節約できることは言うまでもありません。それに普通の人は、自分の携帯に10個のレストランアプリを入れるなんてことしませんよね。それが、私たちがRitualと提携した理由です。」と語る。

「Ritual」は企業の福利厚生の一環としても利用されている。
「50人の従業員がいれば、その従業員たちがランチの注文のために無駄にする時間は、会社全体で年間244日にもなります」。このように需要を喚起し、「Ritual」のサービスの利用を促しているのだ。

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レイ・レディーは、トロント単体でのレストラン市場規模は年間20億ドルにものぼると話す。オフィスワーカー、レストラン、企業を巻き込みながら、新しいランチの形を提供する「Ritual」は、その市場をオンデマンド注文という形で取り込むことができるのか。今後もその成長から目が離せない。

Ritual(リチュアル)
http://toronto.ritual.co/

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