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Amazonキラーとして話題になった「Jet」が400億円を調達して再出発

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Amazonを脅かす存在になる? ー 2015年7月に「Amazonキラー」という異名とともに、大きな注目を集めて登場した米国のスタートアップがある。「Jet(ジェット)」というマーケットプレイスだ。
その特徴はコストコのウェブ版ともいえるもので、有料の会員制かつ安く買えることを売りにしたマーケットプレイスとして登場した。
その「Jet」がサービスを開始してからわずか3ヵ月でビジネスモデルを変える大きな方針転換を行った。そして、その翌月に3億5,000万ドル(約412億円)を調達し再出発を図っているのだ。「Jet」とはどのようなサービスなのだろうか。

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Amazonに事業を売却した経緯をもつマーク・ロアが創業

なぜスタートアップ企業であるにも関わらず、サービス開始時に「Amazonキラー」と言われるまで注目を集めたのだろうか。その答えは創業者の実績にある。
創業者のマーク・ロア氏は、ペビー用品を扱う「Diapers.com」などを運営するQuidsi社を2005年に立ち上げ、2010年11月にAmazonに5億4,500万ドル売却した経歴を持つ人物。その実力は折り紙つきである。
そんな彼が、価格の安さを一番に求める消費者をターゲットに提供を開始したのが「Jet」というサービスだ。立ち上げ時には、売却の経緯からか、「Amazonキラー」として様々なメディアに報じられるなどして注目を集めた。

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中央が創業者のマーク・ロア氏

2015年7月にサービスを開始しているが、当初は年会費49.99ドルの会員限定のマーケットプレイスとしてオープンした。あらゆる商品をどこよりも安く、メンバーであれば最低でも年会費の同額分は一年に節約できることをうたっていた。日本でもなじみ深いコストコモデルのウェブ版といったところで、会員費から収益を上げるビジネスモデルで展開していたのだ。
しかし、この最大の特徴ともいえる、有料の会員制度を10月に廃止し、商品を販売することにより収益をあげる方針転換を行った。

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商品をカートに追加する度に割引

早くも大きな決断を行った「Jet」だが、ただのマーケットプレイスになってしまったわけではない。まとめ買いにより安く買えるユニークな仕掛けを取り入れている。

現在最大の特徴となっているのが、カートに商品を入れれば入れるほど商品の価格が安くなっていくという仕組みだ。カートに1アイテム追加するごとに、次にカートに入れるアイテムが割引されていき、カートに入っている商品が多ければ多いほど割引率が高くなるというものだ。
カートに入れるたびに、対象商品が広がっていき、それぞれの価格もリアルタイムに下がっていくため、楽しいショッピング体験の演出にもなっている。
商品の一覧画面では、一目で対象商品と値引額が確認できる。

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カートにもまとめ買いすることで安くなることがわかりやすく明示される。

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販売する商品のカテゴリは、食料品・日用品・ペット用品・園芸用品・家具・電化製品・アパレル用品・スポーツ用品・オフィス用品・書籍・CDと多岐にわたる。
送料は注文毎に5.99ドルかかるが、35ドル以上の買い物で無料になる。通常の商品は注文後、2日から5日ほどで自宅に届き、生活必需品は2日以内に届ける。
大半の商品は、購入後30分以内であればキャンセル可能となっており、返品も商品到着後30日以内であれば無料で受け付けている。
また、問い合わせも24時間受け付けており、サポートも充実させている。


提携ブランドのサイトでの買い物もキャッシュバック

もう一つ特徴的なのが「Jet Anywhere」というサービス。提携するブランドの公式サイトで購入した場合にも、キャッシュバックしてしまうサービスだ。

「Jet Anywhere」は、600以上の提携ブランドのショッピングサイトで買い物した際に、購入額に応じて「JetCash」という「Jet」内通貨でキャッシュバックするサービスだ。貯まった「JetCash」は「Jet」でのショッピングで使用できる。

貯まる金額はブランドのサイトによって異なるが、最も大きなもので購入額の30%をキャッシュバックするものもある。「JetCash」は、1年間に得られる上限は1,000ドルまでで、最後にショッピングした日より一年間有効となっている。

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「JetCash」を貯める方法は、「Jet Anywhere」のリンクから提携ブランドのショッピングサイトで買い物し、14日以内にブランドサイトから届いた購入確認メールを「Jet」宛に転送するだけ。

提携会社は、「NIKE」「adidas」などのスポーツブランドから「ALEXANDER MQUEEN」「Calvin Klein」などのファッションブランド、「DELL」「Hewlett Packard」などのITメーカー「British Airways」などの航空会社や「ヒルトンホテル&リゾート」まで多岐に渡る。

ブランドの公式サイトに送客をする仕組みである一方、得られる「Jet Cash」を使うために、また自社で買い物をしてもらおうという囲い込みの仕組みとも言えそうだ。


オープン時に大きな話題を集めたものの、早々に方針転換を余儀なくされた「Jet」。「早く商品が欲しい」という消費者のニーズではなく、「安く買い物したい」というニーズを掴むべく開始したサービスだが、有料の会員制というのは予想よりも障害となっていたのかもしれない。
ただ、現状の仕組みから見てもターゲットを変えたわけではないのは明らかで、この方向性が正しいかどうかはこれから改めて証明することになる。

CrunchBaseのデータによると、現在の調達額の合計は5億7,000万ドル(約674億円)にのぼる。11月にFidelity InvestmentsやAlibaba Capital Partnersなどから3億5,000万ドル(約412億円)という大きな資金を調達したばかりのため、これから様々な仕掛けを行っていくだろう。2016年の動きは目が離せなくなりそうだ。

Jet(ジェット)
https://jet.com/

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