INTERVIEW

【インタビュー】「決済のルールを変えるのがスマホ決済の本質」コイニー代表 佐俣奈緒子(中編)

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コイニー株式会社 代表取締役社長の佐俣奈緒子氏にスマートフォン決済や「Coiney(コイニー)」の現状について伺いました。
今回は「【インタビュー】「1秒で完了する決済を実現」コイニー代表 佐俣奈緒子氏(前編)」の続きとなる中編をお届けします。

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クレジットカード決済を初めて導入する事例が多いスマホ決済


―― 主にどんな利用者が多いのかを聞かせてください。

佐俣:利用者の規模のところで申しますと、やはり中小企業、および個人事業主の方々が多いです。かつ、クレジットカードを初めて入れられる方が大半を占めていて、もともとクレジットカード決済を使っている方が乗り換えるというよりは、クレジットカード決済を検討していた方が多いです。

例えば、いままでは高くて入れられなかったとか、手続きが面倒そうで嫌だったという方々が入れるケースと、Coineyを見て「すごく簡単そうだから」という理由でカードを導入される方々が大半です。

業種に関しては、結構バラバラで、飲食というところもありますし、洋菓子店というようなところもあります。
あとは、自動車の整備工場や針マッサージ、アパレルももちろんあって、多岐に渡っています。
屋内で店舗を構えて使っている方もいれば、お寿司屋さんの宅配の場合は、軒先での代金徴収として使われていますし、催事での出店やイベントで使うケースもあるので、持ち運べて場所を問わず使えるところが一番の利点でもあります。
業種についてもどこかに偏りなくお使い頂いている状態ですね。

―― インタビュー後にコイニー社が発表したデータによると、Coineyを利用しているのは、法人が53%で個人事業主が47%という割合となっているようです。下記は業種で分類したもので、飲食店での導入が多いことが伺えます。

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―― 逆にこういうところが使ってくれたらいいのに、という所はありますか。

佐俣:これは、新しいシチュエーションのところに入れたいと思っていて、例えば、これまでは現金で払っていたけど、実はクレジットカードが使えたら便利な場所はいろいろあると思っていて、タクシーに関しても地方にいくとクレジットカードが全然使えなかったりします。
あとは宿泊施設も民宿とかペンションとか、実はまだまだ使えないところがあります。

それこそ、自宅でも決済するケースがあって、引越し業者さんには意外と現金で払っていたり、ピザのデリバリーとかも現金で払っていたりするので、クレジットカードって結構使えるシーンがあると思うんですよね。

あとはライブ会場の物販とか、大きいイベントは結構整備されているんですけど、そんなに大きくない会場に関しては、まだまだ現金でやり取りしているところがあります。そういう、いままで現金でやりとりしていたけども、実は現金を準備するコストが消費者の方にとっても高かったりするケースもあります。

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現金は受ける側も管理コストが必要になるんですよね。例えば「営業マンに大金持たせたくないんだよね」ということがありますし、イベントとかだと額が集まるので、それを安全に銀行に持って行くコストって実はかかるんだよねとか、双方にまだ課題があるところに対して、まずは入れていきたいというのがありますね。

去年の夏に一時的に伸びた例で、信州の方のツアーガイドさんが使われているケースがあります。カヤックとか、山のトレッキングとかの1日ツアーをやっているんですが、これまでは現地で集合して、現金でもらっていたんですが、1日中お金を持った状態でお客さんをご案内していたんです。

お客さんも、そういうところに行くときはなるべく身軽がいいんですけども、現金準備しておかないといけなくて、意外と家族5人でいくと、数万円払うケースがアクティビティでは結構あって、そこをクレジットカードでやると、お客さんもクレジットカードだけでいいですし、ガイドさんもそれで受ければ、現金を持ち歩かなくてよくて、お互い身軽になる。そういうことが、まだ日本もいろんな場所で起きるんじゃないかと思っています。


決済のルールを変えるのがスマートフォン決済の本質


―― なぜクレジットカードが使えない社会が続いていると思われますか?

佐俣:日本って実は、クレジットカードの発行自体が少ない国ではなくて、クレジットカードは3.3億枚ぐらい発行されています
労働人口あたりで割っても、だいたい一人あたり最低でも3枚ぐらい持っている計算になっていて、よく日本ってクレジットカードを使わないというんですけど、持ってはいるんですよね。

私が持っている仮説としては、使えるお店や使えるシチュエーションが少なすぎるのが要因ではないかと思っています。
それがなぜかと考えると、やはりいままでのクレジットカードのルールや必要になるコストが、なかなか中小の方々にとっては重いものになっていたのではないかと。

審査基準だったりとか、審査の手続きのフローだったりとか、端末をまず買わないといけないという、そこに対する経済投資ですね。
それが足かせになっていて、ほんとにそこに支払って価値があるものかどうかというのが、ずっと判断がつかなかったのではないかと思っています。

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今回入り口の初期投資を限りなく減らしていったりですとか、審査を簡便にすることによって、とりあえずやってみようということができるようになってきているので、そうすることによって、新しいシチュエーションでクレジットカードを使うようになってくるんじゃないかと思うんですけども、決済のルールを変えるってところが、実はスマートフォン決済の本質で、これがスマホとタブレットとリーダーですというところは、あくまでソリューションの一つに過ぎないんです。

それがいま、オンライン決済のほうにも波及し始めていて、 それこそヤフーさんが非常に簡単な決済のAPIを出しますと、すぐに使えて、決済手数料3.25%ですみたいなのって、いま日本全体でこれまでなんとなく決済の中で決まっていた暗黙のルールみたいなのがあって、そこがいま少しずつ変えられてきているので、事業者さんにとってはいい時代がきているんじゃないかと思うし、私はもともとそういう世界を作りたかったので、すごくいい傾向にきていると思っています。


コイニーの現状


―― 今回業務拡大による移転ということだったんですけど、コイニーの現状を聞かせてください。

佐俣:我々は会社を設立してちょうど2年が経ったところで、サービスを一般に公開してちょうど1年というところです。最初の1年はほとんど準備期間として費やしていて、βテストをしながらやっていたんですけども、この1年で非常に多くの方々にサービスを届けることが、まずはできたのかなと思っています。

ただ、スマートフォン決済というところで見ると、まだまだ市場は小さいと思っていて、世の中、全然知らない人の方が多いですし、いま新たにお店開いて、クレジットカード決済を導入したいなという時に、まずスマートフォン決済が思い浮かぶかというと、そうではなくて、既存の方にいくと思うんですよ。
なので、知ってもらうってところと、使ってもらうってところは、まだまだ全然足りてないですし、ここはいろんな方々の協力を得ながら届けていかなければいけないなと思っています。


―― 本年度10万リーダーという目標を掲げているとのことですが。

佐俣:まだまだ自分がイチ生活者として、自分たちのサービスを良く見ますかというと、全然見ない状況があって、おそらくそうだと思うんですけど、一旦、10万ぐらいまでいったときに、多少見るようになるのではないかという感覚を持っています。

日本の事業者さんってだいたい400~500万ぐらいといわれていて、支店が何個かありますというのも含めると、だいたい850万ぐらいと言われています。さらにそれに個人事業主の方、個人で何かをされている方を含むともっと多くの方がいる中で、10万ってほんとに一握りなんですが、ただそこがひとつバーになると思うので、まずはそこを目指そうと思っています。

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明確な対価があれば個人間での決済で利用できる


―― 個人でもコイニーは使えるんでしょうか。

そうですね。個人の方で何か売りたいというものがある方に関しては、利用前の審査時に個人事業主としての証明が必要になりますが、お使いいただくことは全然できます。
例えば主婦の方でアクセサリーを作っていて、週末に何かを売る時にお使いいただいている方もいますし、我々としたら使う用途を教えて頂いて、ある程度クリアになっていれば、基本的にはサービスを提供しています。

―― 個人が物を売る際に、法律的なしがらみというかこれをやってはいけないことはありますか?

佐俣:日本でお金を受け渡す時に法律上2つのやり方があって、ひとつはおみやげを買ってきて、それに対して代金を払うケース。これは仮に個人間であっても、何かの対価に対してお金を払うのは全く問題ないです。

よく当てはまるのって、オークションとかがそうだと思っているんですけど、タンスの中のいらなくなったものを出品します、値段をつけて売買します。そういうものは、クレジットカード決済というところでいくと、問題ないです。

どういう時に問題になるかというと、何かの対価に対して支払う形じゃない場合があって、 例えば、友達同士で割り勘するとか、親から子供に支払う仕送りをするとかは、明確な対価が存在しないんですね。
こういう場合は、日本のルール上、送金という別のくくりになっています。決済は経産省の管轄ですが、送金は金融庁の管轄なんですよ。

送金は2010年まで銀行しかやってはいけないというルールがあって、それを外に広げていかないといけないよねという流れの中で、金融庁にきちんと登録した事業者に関しては、送金業を行ってもいいですというルールが2010年の4月から法律で執行されて、そこに登録しているところに関してのみやっていいという形です。
我々はまだ、資金移動業として登録はしていないので、基本的には売買に対してご利用頂きたいというところです。

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これは日本独特のルールで、アメリカだとそこまで決まっていなくて、アメリカって結構、こういうサービスが個人間で使われたりするんですけども、日本はどうしても線が引かれていて、個人だからといって、必ずしも問題というわけではないんです。


―― あくまでちゃんと物があって、それ相応の価値で取引をする必要があるということですね。

佐俣:そこって必ずしも物ではなくてもいいので、例えば、何か英会話のレッスンで、授業料1回3,000円ですと、それに対して、払うというのはOKなので、物理的なものがなくても対価として認められています。

ルールの面でいえば、グローバルで見たときは、どちらかというと日本のタイプの方も増え始めていて、台湾・インド あたりは特に縛りがきつくなっていますし、どちらかというとアメリカが例外に近いかもしれないです。ブラジルも結構厳しいです。

そこはなんでかというと、金融庁が管轄しえない、国を超えてのマネーロンダリングが起き始めるんですね。非常に目を尖らせ始めている国が多いので、 誰でも簡単にお金をやりとりできるというのは理想なんですけども、やはりそこにはルールがいるよねという流れは、この数年ぐらいあって、各国の金融庁が対応をはじめているところではあります。 アメリカと比較すると、日本って厳しいなって思うんですけども、それ以外の国でみると意外ともっと厳しかったりします

―― Coineyは個人で利用することが可能ですが、利用するには加盟店になる必要があるので、厳格な審査を通ることがまずは大前提としてあります。

後編「競合は現金払い、キャッシュレスな世界にしたい」に続く。

編集後記

個人的にクレジットカードは「時間がかかるもの」で「使えない場所が多いもの」という印象を持っていました。「使えて当然」ではなく「使えるか毎回確認が必要」なものという感覚です。
つい最近も、レジでクレジットカードで払おうとしたら、「現金だけなんですよ」と言われて慌てて残金を確認したことがありました。そういう経験があると、「とりあえず現金で払っておこう」という心理が働きますよね。

考えてみれば、クレジットカード決済を導入できるところはまだまだあって、あたり前に使えるようになることで、利用率もまだまだ伸ばせるものなんだと、今回のインタビューで考えさせられました。スマートフォン決済はその後押しとなるサービスなのだと思います。

日本ではICカードの普及が進んで注目を集めていますが、クレジットカード決済ももっと利用しやすい世の中が広がって欲しいと、一人の消費者として思うところですね。



Coiney(コイニー)
http://coiney.com/

イイヅカ アキラ

イイヅカ アキラ

Shopping Tribe編集長。Web制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事後、フリーを経て、現在は株式会社プレイドに所属。
【メディア出演歴】
日本テレビ「ZIP!」 / TOKYOFM「中西哲生のクロノス」 / 週刊SPA!
イイヅカ アキラ
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